『事業にかかる各種申請』|社会福祉法人の事業譲渡のための手続き その⑦

本記事では、厚労省「合併・事業譲渡等マニュアル」(160〜165ページ)をもとに、

この記事の内容

・事業にかかる各種申請について
譲渡側・譲受側がスムーズに申請を進める方法

についてくわしく解説します!

▼関連記事は以下をご覧ください。

事業譲渡における財産処分の実施事項

事業譲渡を行う際には、財産処分に関するさまざまな手続きを進める必要があります。
大きく分けると以下の4点です。

項目 内容
(1) 基本財産処分の申請
(譲渡側)
譲渡法人は、譲渡事業の基本財産について、財産処分の申請を所轄庁に行います。
(2) 補助金にかかる財産処分の申請
(譲渡側)
譲渡事業に対して国および都道府県から補助金交付を受けている場合、譲渡法人は財産処分の申請を行います。
(3) 施設の廃止申請および設置の申請
(譲渡側・譲受側)
譲渡法人は、譲渡事業について施設の廃止申請を行い、譲受法人は、譲受けた事業について施設の設置申請を行います。
(4) 付随機能の申請(譲渡側・譲受側) その他譲渡事業に付随する機能(付属診療所、付属保育園など)について申請が必要な場合は、それらについて担当窓口へ必要な申請を行います。

 

POINT

「基本財産の財産処分」と「補助金にかかる財産処分」は、どちらも「財産処分」という言葉が使われますが、まったくの別物で、それぞれ別々に手続きが必要です。注意しましょう!

社福経営者Aさん

財産処分の手続きだけでも、やることがたくさんありますね…。汗



むらき

そうですね!でも、この流れを押さえておけばスムーズに進められますよ。

基本財産の財産処分の申請(譲渡側法人)

基本財産の財産処分は評議員会の議決事項となる

POINT社会福祉法人の基本財産を処分する場合、法人運営に関わる重要な決定となるため、評議員会の議決が必要になります。
評議員会の議決が必要となる例
  • 法人の資産の大部分を譲渡する場合
  • 基本財産を売却し、新たな施設運営の資金に充てる場合
  • 法人の経営方針が大きく変わる場合

この手続きを怠ると、法人内部での合意形成が不十分になり、さらに法令に沿っていないため、その手続き自体が無効になる可能性があります。

補助金にかかる財産処分の申請(譲渡側法人)

POINT補助金を受けて取得した財産を処分する場合は、財産処分の承認申請が必要です。
手続きは、「有償で譲渡する場合」と「無償で譲渡する場合」で異なります。

以下の表を参考にしてください。

厚労省「合併・事業譲渡等マニュアル」より

財産処分の承認申請(有償で譲渡する場合)

POINT有償譲渡の場合は、基本的に「残存年数分」または「譲渡額に総事業費に補助金の割合を乗じた額」のどちらか計算し、国庫に納付(返納)する必要があります。
計算方法 返納額
残存年数分を計算 補助金で取得した財産の耐用年数に応じて残存年数分を算定し、その分を返納。
譲渡額に補助金割合を乗じた額 財産の譲渡額に補助金の割合をかけた額を算出し、これを返納。

どちらの計算方法が適用されるかは、財産の取得時期や補助金のルールによります。

その他のポイント
  • 所轄庁には譲渡の経緯や目的、返納額について事前相談を行うことが重要です。
  • 財産処分の簡素化措置が認められる場合は、提出書類が軽減されます。

財産処分の承認申請(無償で譲渡する場合)

POINT無償で財産を譲渡する場合でも、「財産処分報告書」の提出が必要です。

特に、以下の条件を満たす場合は国庫納付(返納)が不要になります。

Tips
  • 財産取得後10年以上経過していること
  • 譲渡先法人が同じ事業を継続する場合
  • 厚生労働行政関連の事業に転用される場合

社福経営者Aさん

有償か無償かで、手続きが変わるんですね!



むらき

そうなんです!特に有償の場合は返納の計算が必要なので、事前に所轄庁と相談しておきましょう。


▼財産処分の手続きの流れやポイントをまとめたページがありますので、こちらもどうぞ!

譲渡施設の廃止・設置申請

次は実施要項の3つめ、「譲渡施設の廃止・設置申請」について。

POINT事業譲渡をスムーズに進めるためには、譲渡側では廃止申請を、譲受側では設置申請を、同時期に行うことがポイントです。

なぜ同時に申請するの?

Tipsもし申請のタイミングがずれると、譲渡側法人の施設が廃止された後に、譲受側法人の設置が完了していないという状態になり、事業の継続が一時的にストップしてしまう可能性があります。

これにより、施設の利用者や職員に大きな影響を与えることになります。

むらき

施設運営が滞りなくスムーズに移行できるよう、両法人で調整を行い、適切なタイミングで申請を進めることが大切です。

理想的な進め方

社福経営者Aさん

じゃあ、具体的にどういった流れで進めていけばいいでしょうか?

POINT事業をスムーズに移行させるためには、譲渡側と譲受側がしっかり連携を取り、以下の手順で申請を進めることが理想的です。
スムーズな進め方

①譲渡側法人が廃止申請を提出
事業を譲渡する法人は、対象となる施設の廃止申請を所轄庁に提出します。

②譲受側法人が設置申請を提出
事業を受け継ぐ法人は、同じタイミングで新たな施設の設置申請を行います。

③両者の手続きを同時期に進める
申請のタイミングを合わせることで、事業運営に空白期間が生じるのを防ぎ、利用者や職員に影響を与えないようにします。

以上のことをスムーズに行うためにも、事前に所轄庁とは十分に協議しながら、進めていきましょう!

まとめ

今回は、事業にかかる各種申請と財産処分について解説しました。ポイントをおさらいすると…

POINT
  • 「基本財産」と「補助金にかかる財産処分」は別物!
  • 譲渡側法人では財産処分の申請が必要
  • 有償・無償で手続きが変わる
  • 譲渡施設の廃止・設置申請は同時期に行うのがベスト

▼財産処分の詳しい手続き方法は以下のリンクにまとめてありますので、お読みください^^


スムーズな事業譲渡のために、しっかり準備を進めていきましょう!

当サイトでは、社会福祉法人の合併や事業譲渡についてのアドバイスをしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。