

【社会福祉法人愛生会 理事長】趣味は神社仏閣巡りです。大宮の氷川神社と成田山新勝寺はずっと通い続けています。これからの社会福祉法人経営の悩み、問題、課題を一緒に考えていきましょう。
「時代の変化に適応していく福祉の担い手を育成するプラットフォーム・ハブ」への思い
この度、会報経営協において全国社会福祉法人経営青年会(以下、全国青年会)の特集を組んでいただいたこと、心より感謝申し上げます。
また、全国経営協の皆様には、日頃から多大なるご支援を賜り、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
本特集では、全国青年会の各委員会の活動や前期から行った組織構造改革などについてご紹介しております。
次ページ以降から各委員会の活動内容も記載しておりますので、ぜひご覧ください。
ここでは、私が全国青年会に感じている危機感や、現在まで取り組んできた改革についてお話しいたします。
全国青年会は、前期(2021年~2022年)の梅野前会長時代から、活動内容、組織体制や構造そのものが大きく変化しています。
全国青年会への理解を深めていただき、さらなるご支援をいただけるきっかけになれば幸いです。
▶︎「会報経営協2025年3月号」での私の挨拶全文となります。
時代背景からの危機感と会員メリットの見直し

まずは、私自身が全国青年会に対して感じていた危機感や、改善が必要だと考えていた点についてお話ししたいと思います。
情報共有の変化と組織の役割
現代は、インターネットやSNSの普及により、誰もが簡単に情報を発信・共有できる時代です。
その結果、従来のような「情報の非対称性」はなくなりつつあります。
特に、厚生労働省からの通知や報酬改定の情報などは、一次情報にアクセスすることなく、受け取る側の多様な解釈とともに短期間で発信・拡散されています。
さらに、多くの個人が情報を発信することで新たなつながりが生まれ、そうした「個」と「個」が結びつくことで、必要な情報をいくらでも得られる時代になっています。
こうした背景の中で、私は「全国青年会の存在意義を再定義する必要がある」と感じていました。
会員メリットが感じづらい仕組み
従来の全国青年会の活動は、「集合・対面(リアル)」形式のみで行われており、さらに「どなたでも参加可能(オープン)」というスタイルでした。
このため、普段仕事をしている会員や所属している法人にとっては移動や時間、費用の負担が大きく、会員であるメリットを感じられる機会が限られていたのです。
ただでさえ人手不足の状況で、物理的・費用的な負担を伴う参加以外の選択肢がない場合、せっかく学びの機会を提供しても、その価値を実感できる会員は限られてしまいます。
(もちろん、集合・対面でその場を共有することの大切さは十分に理解しています。むしろ、コロナ禍を経たことで、その価値が改めて見直される機会にもなりました)
また、会員と非会員で参加費用に差を設けていたものの、それ以外に「会員であること」のメリットを感じられる機会や仕組みが十分ではありませんでした。その結果、青年会の活動が外部から見えにくくなり、「何をしている団体なのかわからない」と思われることにもつながっていました。
梅野前会長も私も、全国青年会に対して同様の危機感を抱いていました。
全国青年会の強み・価値とは?

そうした危機感の中で、
を改めて考える必要があると感じました。
そこで、私が考える全国青年会の強み・価値を以下の6点にまとめました。
1.ハブ
福祉に携わるさまざまな専門職や役職が垣根を越えて集まり、つながりやコミュニティ、集合知、悩みや学びの共有が生まれることは、青年会ならではの特徴です。
2.信用力
先人や先輩方が築き上げた信用とつながりがあり、行政機関ともダイレクトに連携できる信頼関係があります。
3.人材の蓄積
設立から約30年が経ち、福祉業界を代表し、支える人材を多く輩出してきたことが青年会の大きな強みです。
4.学びの機会の提供
研修やセミナー、会員同士のつながりを通じて、各法人の事業展開や施設経営の支援を行っています。
5.「全国青年会」という組織としての発信力
個人での発信よりも、組織として福祉や業界の情報を発信するほうが、幅広い媒体で注目されやすいという強みがあります。
6.全社協との連携
全社協を事務局とすることで、非常に高いレベルの事務局機能を持ち、業界内外での信用力を補完していただいています。
私は、こうした全国青年会固有の強みを最大限に活かし、活動を展開していくべきだと考えました。
福祉の担い手を育成するための「3つの方針」

これまで述べてきた「時代背景からの危機感」や「対面形式・オープン参加のみの活動」という課題を踏まえ、全国青年会固有の価値を最大限に活かすため、
というミッションを掲げ、以下の3つの方針を設定しました。
全会員が時間的・空間的(場所的)制約なく、会員メリットを享受できる構造・活動・体制にすること
2.
会員メリットを追求していくこと
3.
活動を通じて、次代の福祉業界をに担う人材を輩出すること
上記の方針に基づいて進めてきた具体的な施策をご紹介します。
(一部は梅野前会長の時代から行ってきたものも含みます)
方針達成に向けた施策
施策1:DX(オンライン)化の推進とホームページリニューアル
手続きのオンライン完結化と会員限定コンテンツの構築を目指し、ホームページをリニューアルしました。
1.会員IDの発行
会員専用マイページや限定コンテンツを利用可能に。
2.入会手続きのオンライン化
「紙・押印・郵送」の方法を廃止し、簡易な入会手続きへ。
3.会費請求の一元化とオンライン化
全国と都道府県組織で分かれていた会費請求をまとめ、メールでの振込案内を実現。
4.オンラインセミナーの申込・決済システム
より簡潔でわかりやすいシステムを導入。
5.オンライン会議の実施
毎月、正副委員長会議と幹事会をオンラインで開催し、各委員会の進捗状況を共有。
施策2:オンラインセミナーの拡充
すべての委員会が、それぞれの活動テーマに沿ったオンラインでのセミナーを2回ずつ、計8回実施しました。
1.学びの機会を拡大
ほぼ毎月の開催で参加しやすい環境を整備。
2.職場からの参加も可能
移動の負担なく参加できる仕組みを提供。
施策3:「タテヨコプロジェクト」サイトの構築
これまでの人材の蓄積や多様な取り組みをつなげるためのプラットフォーム「タテヨコプロジェクト」を開設しました。
施策4:SGWCサミットの開催
社会福祉法人も、社会課題の解決を目指している法人の一つであることを社会へPRしていくため、
福祉分野をはじめ、社会課題の解決を目指す人々が一堂に会するイベントを実施。
施策5:会員限定コンテンツの提供
「会員であることのメリットが感じにくい」という課題を解消するために、会員限定コンテンツを充実させました。
オンライン座談会
毎月のマンスリー座談会を通じて交流を深める。
動画コンテンツ配信
一般公開用と会員限定用を明確に分けて提供。
施策6:青年福祉Labの研究事業
次世代の社会福祉法人の在り方を探求する研究プロジェクトを展開しました。
1.学識者の参加:多様な分野から専門家が参加。
2.若手会員の公募参加:新しい視点を取り入れる場を提供。
このように、青年会の活動は大きく変わってきました。
青年会の変化を実現させてくれた“同志”の存在

(役員の集合写真を)
特に総務DX推進委員会には、会員IDを活用したホームページのリニューアルや会費請求の一元化、さらに「タテヨコプロジェクト」の登録サイト構築など、多岐にわたる取り組みを進めていただきました。
こうした外部や会員からは目に触れにくく、評価されづらい「陰の部分」の業務にも率先して取り組み、協議・実行してくださったことに深く感謝しています。
初めての試みとなった「SGWCサミット」においても、「前例や型」がない中で、登壇者へのオファー、当日までの準備、会場設営、進行などを試行錯誤しながら進めてくださいました。
また、このSGWCサミットは、HCR(国際福祉機器展)という素晴らしい場を会場として使用させていただきました。前例もなく、どのようなイベントになるのか見えない状況の中で、会場や設備の使用を承諾してくださった広報協の皆様にも、この場をお借りして心より感謝申し上げます。
次ページ以降に記載されている委員会の活動紹介をご覧いただければお分かりいただけると思いますが、「会員メリットの追求」という方針のもと、それぞれの委員会でペルソナと活動テーマを明確に設定しています。
また、すべての委員会で年2回ずつ、合計8回のセミナーを実施し、ほぼ毎月セミナーを提供する体制を整えました。各委員会や事務局にとっては相当な負担があったかと思いますが、確実に実行してくれたことに感謝しています。
全国青年会の構造変化については、この後の各委員会の活動報告にはなかなか反映されにくい部分です。
そのため、感謝の気持ちを込めてご紹介させていただきました。
厳しい時代だからこそ、全国青年会のこれからの活動がますます重要になってくる
全国青年会はこれまで多くの活動を行ってきましたが、その取り組みの重要性はこれからさらに増していくと考えています。
また、私見を交えると、これまでの流れの延長線上ではなく、新しい視点で法人経営や事業展開を模索する時代が訪れると強く感じています。
供給制約と需要消失が並列化する時代へ


私たち社会福祉法人は、人手不足をはじめとする「供給制約」に直面しています。
そのため、賃金格差の是正や報酬の増加、福祉業界の魅力発信、生産性向上、さらには外国人人材の活用といった方策に官民一体で取り組んでいます。
また、これまでは「待機児童ゼロ」や「介護離職ゼロ」といった象徴的なスローガンのもと、いかに供給を増やし、サービスを確保するかを主眼とした政策も進められてきました。
一方で、特に地方では、福祉サービスを提供する主体自体がほとんど存在しなくなり、福祉事業が成り立たないという「需要消失」の問題にも直面せざるを得ない状況です。人口減少が進む限り、この傾向は今後さらに深刻化していくでしょう。
このように、ある地域では増え続けるサービス需要をどのように満たすかという「供給制約」が課題となり、一方で別の地域では福祉サービスを必要とする人がいなくなる「需要消失」が課題となる状況です。
これらが地域ごとに並列して進んでいく時代が訪れると考えています。
地域や事業種別ごとに異なる状況がある中で、今後どのように福祉サービスを維持し、事業所を継続していくかを考える必要があります。そのためには、法人同士の連携や合併、さらには事業の再編・統合といった選択肢も視野に入れる必要があります。
こうした状況の中で、全国青年会が今後どのような活動を展開するかが非常に重要となります。そのような時代だからこそ、これまでにない新しい発想での事業展開を検討し、地域の実情に応じた制度や政策を作るために、国や行政への積極的な働きかけも求められます。さらに会員の皆さん
青年会の仲間の中には、小児科併設のこども園を開設する(医福連携)など、これまでにない新しい取り組みや事業展開を目指している方が多くいます。
そういった意味で、福祉施策研究・提言委員会(青年福祉Lab)の報告書は、全国青年会のこれまでの「思考のリレー」を受け継ぎ、今の我々が考える新たな社会福祉法人像の提案になります。
願わくば、未来の青年会では、その「思考のリレー」をさらに発展させ(場合によっては否定もして)、その時代、環境、価値観に合わせた新たな社会福祉法人像や社会福祉事業を創造していってほしい。
そういった思いをもった方たちが結集できるハブとなり、時代に即した社会福祉法人の新たな役割や制度を提案・実践・共有する場として、全国青年会の活動がさらに活発になることを願っています。
次ページ以降の各委員会の活動状況をご覧いただき、全国青年会の価値を感じていただけましたら、ぜひご入会をご検討いただければ幸いです。
最後に、全国青年会に関わるすべての方に、心より感謝を申し上げ、私の挨拶とさせていただきます。
このたびはありがとうございました。

【社会福祉法人愛生会 理事長】趣味は神社仏閣巡りです。大宮の氷川神社と成田山新勝寺はずっと通い続けています。これからの社会福祉法人経営の悩み、問題、課題を一緒に考えていきましょう。
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