なぜ今、社会福祉法人が「法人間連携・合併・事業譲渡」を視野に入れるべきなのか?

令和6年9月19日に厚労省から「社会福祉法人の事業展開に係るガイドライン」が改正・更新されたものが発出されました。

また同日、同じく厚労省から、社会福祉法人の「合併・事業譲渡等マニュアル」の最新の改訂版も発出されました。

さらに国は、さまざまな社会福祉法人同士がつながり、連携していく仕組みである社会福祉連携推進法人制度の設立促進や、小規模法人ネットワーク化の推進など、法人間連携も推し進めています。

この記事では、社会福祉法人への通知やマニュアルが発出されるなど、「なぜ国は、社会福祉法人の法人間連携や合併、事業譲渡」を推し進めるのか、背景と理由について、

POINT

・人口減少、供給制約などの2040年問題への対応

・福祉ニーズの複雑化複合化、地域社会の変化

・国の様々な会議における政策的方向性

以上3つの観点から解説していきます。

人口減少・供給制約など2040年問題への対応について

2040年問題とは何か?

日本の人口構造の変化によって、将来的に福祉サービスの担い手が大きく不足する可能性があること、福祉サービスの提供体制に支障がでる可能性があることを指します。

(出所)厚生労働省「第3回社会保障審議会年金部会資料」

このような状況では、福祉サービスの提供に必要な人手が不足し、福祉サービスが提供できなくなることが予想されます。

社会全体で福祉の支え手を確保し、安定的にサービスを提供していくための対策が必要となります。

福祉ニーズの複雑化複合化、地域社会の変化

ヤングケアラーの問題や、ゴミ屋敷問題、親の介護と子育てを同時に行うダブルケア、80代の親に50代のひきこもりの子が同居することで困窮に陥る、いわゆる「8050問題」など、福祉ニーズの複雑化複合化が進んでいます。

さらに、これまでの地域社会で共同体機能を果たしていた血縁、地縁といったつながりが希薄化し、地域の共同体としての機能もぜい弱化している現状があります。

そのような福祉ニーズの複合化複雑化や地域の共同体機能のぜい弱化のなかでは、これまでのように、介護サービスだけ、保育サービスだけ、を単独で提供するだけではなかなか対応することはできなくなります。

こうした複雑化複合化に対応するためには、介護、保育、障がいといった種別を超えた、横断的、包括的な福祉サービスの提供体制を構築していく必要があるため、社会福祉法人間での連携や協働化という視点を求められているのです。

国のさまざまな会議における政策的方向性について

こうした背景のなかで、国や政府においても、さまざまな会議のなかで、社会福祉法人の福祉サービスの提供体制に関する議論が行われています。

以下に、その一部を紹介します。

Tips【規制改革会議】 
◇高齢化とともに、高齢者を含む人口減少が進む我が国において、良質な福祉サービスの持続性を確保し、利用者の生活に支障を及ぼしかねないサービスの中断・停止等を回避するためには、事業者(社会福祉法人を含む。)の協働化や合併、事業譲渡等による経営力強化等が必要である。それを踏まえ、事業者の手続き負担の軽減措置を講ずる。
Tips【骨太の方針】
◇ 質の高い効率的な医療・介護サービスの提供体制を確保するために、社会福祉連携推進法人の活用を図る。
Tips【デジタル行財政会議】
◇デジタル化等効率的な経営の前提としての協働化・大規模化等するため、経営課題の気付きの促しや、合併・事業譲渡等の環境整備、社会福祉連携推進法人の設立促進など支援を実施する。
Tips【全世代型社会保障構築会議】
◇ 2040 年に向けて、都市部ではさらに高齢者が増えていく、地方部では高齢者も含めた人口減少が進んでいくというような違いもある中で、それぞれの地域の特性に応じて、介護・障害・福祉や医療も含めた横断的な提供体制の在り方についても議論する。

こうした様々な会議のなかでも、法人間連携や大規模化による、福祉サービスを提供する事業者の経営の効率化安定化を促す方針が語られ、それに沿った政策が推し進められています。

まとめ

なぜ今、社会福祉法人は「法人間連携・合併や事業譲渡」を考える必要があるのか、その背景と理由を、

POINT

・人口減少、供給制約などの2040年問題への対応

・福祉ニーズの複雑化複合化、地域社会の変化

・国の様々な会議における政策的方向性

これら3つの観点から考えてきました。

社会福祉法人にとって、法人間連携、合併や事業譲渡は単なる経営の選択肢ではなく、地域の福祉ニーズに応え続けるための重要な手段

であることを忘れてはいけません。

複雑化する地域のニーズや人口構造の変化に対応するためも、法人の強みを活かしながら経営基盤を強化することが求められています。

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。