『評議員会の承認』~社会福祉法人の吸収合併のための手続き その5〜

本記事では、厚労省「合併・事業譲渡等マニュアル」に基づき、

この記事の内容・評議員会の承認の流れ
・対象となる法人
・注意点

を詳しく解説します。

▼今回解説する「評議員会」の前段階である「事前開示」については、以下の記事をごらんください。

評議員会の承認と対象となる法人

社会福祉法人が合併を行う際、合併契約を正式に進めるために必要な手続きです。

POINT合併に関わる両方の法人(吸収合併消滅法人・吸収合併存続法人)で評議員会の承認を受ける必要があります。

これが法的な要件となっています。

消滅法人

消滅法人(合併後に法人として存在しなくなる側)は、合併契約を正式に進めるために、評議員会の決議を経て承認を受ける必要があります。

これは法的な要件であり、評議員会を開いて承認を得なければ、合併手続きが進められません。

また、承認が得られた場合、その内容を議事録として記録することが義務付けられています。

この議事録は、後続の手続き(所轄庁の認可や登記)においても重要な書類となります。

さらに、合併契約の詳細は、評議員会の開催前に全評議員に対して通知される必要があります。

存続法人

存続法人(合併後も法人として存続する側)も、同様に合併契約を進めるために評議員会の承認が必要です。

こちらも評議員会を開催し、決議を経ることで手続きが法的に整います。

議事録の作成と保存は必須で、記録としての正確性が求められます。

債務額が資産額を超える場合は

POINT消滅法人から受け入れる債務の額が資産の額を超える場合には、理事はその旨評議員会に説明する必要があります。

合併によって、消滅法人から引き継ぐ資産と負債の関係は重要です。

仮に債務が資産を上回る場合、存続法人の理事はその旨を評議員会に対して正確に説明する義務があります。

この情報は、法人の財政状態に直結するため、評議員の理解を得ることが重要です。

むらき

このような債務>資産のケースの場合は、理事はしっかりと評議員に対して説明しなければなりません。また評議員はその説明を聞いた上で議論し、最終的に決議するということになります。またその説明や質問などの評議員会で行われた議論については、当然ですが、議事録にしっかり記載しておくことが大切ですね

承認の手順

評議員会の承認の具体的な流れは、以下のとおりです。

POINT①評議員会の開催
合併契約に関する議題を設定し、評議員会を開きます。

②決議内容の議事録作成
合併契約に対して承認を得た場合、その内容を議事録として記録します。

議事録の重要性

議事録は、法令上必要な書類です。これがないと、後の手続きが進められません。
承認された内容を正確に記録し、保管することが求められます。

評議員会の承認における注意点

評議員会の承認を受けるにあたり、以下の点に気をつけましょう。

注意点

【事前準備とスケジュール】
合併契約の内容を、評議員会の2週間前までに全評議員に共有し、事務所に備え置く必要があります。

 ▼この「事前開示」のステップについては、以下の記事で詳しく解説しています。
 

【変更がある場合】
評議員会から合併登記日までの間、契約内容に変更があれば即時反映します​。

むらき

合併契約の内容を、「評議員会の2週間前までに全評議員に共有する」ということは、理事会はそれ以前に開いていなければなりません。合併契約のスケジュールには余裕をもった形で進めていきましょう。

具体的な例

例えば、A法人(消滅側)とB法人(存続側)が合併する場合、以下のような流れになります。

  1. A法人で評議員会を開き、合併契約を承認。
  2. B法人でも同様に承認。
  3. 双方で議事録を作成し、次のステップへ進みます(所轄庁の認可や債権者保護手続きなど)。

まとめ

今回は、「評議員会の承認」について解説しました。

消滅法人・存続法人の双方が法的要件を満たすために、適切な議論と意思決定を行い、議事録を正確に作成・保管する必要があります。

特に、債務が資産を上回る場合には、理事がその状況を詳細に説明し、評議員たちの理解を得ることが不可欠です。

これらの手続きがスムーズに行われることで、合併後の法人運営や地域福祉サービスの質を安定させる土台が築かれます。

評議員会の承認プロセスを適切に進め、社会福祉法人としての公益性・非営利性を守りながら、地域社会のニーズに応えていきましょう。

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。