支払対価の決定プロセスとは?|社会福祉法人の事業譲渡のための手続き その⑤

本記事では、厚労省「合併・事業譲渡等マニュアル」(156ページ)をもとに、

この記事の内容事業譲渡等の支払対価の決定プロセス

について解説します。

適正な支払対価を決めるには、財務や法務、労務の各種調査・分析を通じて事業の価値を正しく評価することが重要です。特に注意すべきポイントをわかりやすくお伝えします!

▼前回の記事「事業譲渡における事前調査」

 

事業譲渡等の支払対価の決定プロセスについての留意点

事業譲渡等では、適正な支払対価を決定することが大切です。これは、譲渡法人・譲受法人の双方が納得するための基盤となります。

このプロセスでは以下のポイントが重要です。

POINT

・無形財産(のれん代)の評価額の設定
ブランド価値や事業の将来性を含めた「のれん代」をどう評価するかも含まれます。

・財務・法務・労務の詳細な調査
経営状況や法的リスクなど、様々な観点からの分析が必要です。

無形財産への評価額の設定

事業譲渡では、いわゆる”のれん代(無形財産)”をどのように評価するかも大きなポイントとなります。

POINTのれん代とは、ブランド力や事業の将来性など、帳簿に載らない価値を金額で表したものです。

 

主な評価ポイント

社福経営者Aさん

のれん代って、どうやって評価するんですか?



むらき

専門家に依頼することが多いです。例えば公認会計士が収益性や市場価値を基に計算するなどします。



無形財産の評価ポイントは以下のものが挙げられます。

・ブランドの知名度や信用度
・将来的な収益性の見込み
・市場における競争力

適切に評価を行うことで、譲渡側・譲受側の双方が納得できる支払対価の一つにもなります。

財務調査・分析

財務調査では、事業の経営状態やリスクを把握するために、以下の項目を詳細に検証します。

主な検証ポイント
  • 会計方針の把握、検証
    譲渡法人の会計方針を理解し、適切に運用されているか確認します。

  • 帳簿査閲による異常な取引の内容確認
    不自然な取引やリスクのある取引がないかチェックします。

  • 経営成績、財政状態、主要な経営指標の経年比較分析
    過去数年間の収支状況や財政状態を比較し、傾向を分析します。

  • 予算・実績差異の分析
    実際の収支と予算との差異を確認し、経営計画が適切かを判断します。

  • 銀行残高証明書の入手、照合
    銀行口座の残高が帳簿と一致しているか確認します。

  • 固定資産の実在性確認
    固定資産が実際に存在し、適切に管理されているか調べます。

  • 引当金の計上有無、妥当性の検討
    将来発生する可能性のある費用に対する引当金が適切に計上されているか確認します。

  • 損害賠償請求の有無確認
    過去や現在の損害賠償リスクがないかを調査します。

  • 役員報酬、給与水準の検討
    報酬や給与が適切であるか、相場と比較して確認します。
社福経営者Aさん

財務調査って、やることがたくさんあるんですね…。



むらき

そうなんです。ここでの調査が抜けると、後から思わぬリスクが出てくることがありますから、丁寧に行いましょう!

法務調査・分析

法務調査では、事業譲渡や合併に法的な問題がないかを確認します。

POINT

・契約書や重要文書の内容確認
・訴訟リスクや未解決の係争の有無
・規制や法令違反がないかの確認

労務調査・分析

労務調査では、労働関係におけるトラブルや法令違反がないかをチェックします。

POINT

・未払い残業代や給与支払いのトラブル有無
・労使間での係争状況
・労働条件や職員処遇の適切性

社福経営者Aさん

労務関連の調査も必要なんですね!



むらき

はい、ここまで労使間での係争やトラブルがないか、労働条件等が法令をしっかり遵守しているかなどをチェックしてもらうことは重要なことだと考えています。

その他

最後に、以下のような点にも注意しましょう。

・所轄庁への事前相談や協議
・国庫補助事業による財産処分の確認
・借入債務(福祉医療機構や民間金融機関)の手続きと抵当権解除

▼これらについては以下の記事で詳しく解説しています。

デューデリジェンス(DD)の重要性

これまで書いてきた詳細な調査や分析を行うプロセスであるデューデリジェンス(DD)は、事業譲渡や合併を成功させるためのカギです。

▼詳しくは以下の記事をご覧ください。
(作成中のため、できましたらリンクを貼ります)

まとめ

この記事では、「事業譲渡等の支払対価の決定プロセスに」ついて解説しました。
今回のポイントをまとめると以下の通りです。

POINTのれん代など無形財産の評価: 事業のブランド価値や将来性を適切に評価。
財務・法務・労務調査: それぞれの分野でリスクを丁寧にチェック。
その他の重要ポイント: 所轄庁との相談や借入債務の確認なども忘れずに。

今回の記事を参考に、しっかり準備を進めてくださいね!

当サイトでは、社会福祉法人の合併や事業譲渡についてのアドバイスをしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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