「特別の利益供与の禁止」と「法人外流出の防止」|社会福祉法人の合併・事業譲渡で必ず知っておかなければならないこと

こちらの記事は「社会福祉法人のための合併・事業譲渡マニュアル」をわかりやすく解説しています。

この記事の内容今回の記事は、「特別の利益供与の禁止」と、「法人資産の法人外流出の禁止」、さらに合併・事業譲渡にあたっての仲介者を利用する場合の手数料、いわゆる「仲介手数料」への考え方について書いていきます。


▼下記のリンクでは、社会福祉法人の合併2パターンのほか、この記事の内容ともつながる「理事の交代」についても書いていますので、ぜひお読みください。

社会福祉法人関係者への特別の利益供与は禁止されている

平成28年の社会福祉法改正(いわゆる社会福祉法人制度改革)により、

役員など社会福祉法人関係者への特別な利益供与は禁止

されました。

特別な利益供与とは何か?

POINT「特別な利益」とは、社会通念上、合理性を欠く不相当な利益の供与や優遇のことを指します。

具体的には、

1:法人の関係者からの不当に高い価格での物品等の購入や賃借、譲渡

2:法人の関係者に対する法人の財産の不当に低い価格(無償含)による譲渡や賃貸

3:役員等報酬基準や給与規定等に基づかない役員報酬や給与の支給 などなど

特別な利益供与が禁止されている社会福祉法人関係者とは?

POINT1:法人設立者、評議員、理事、監事又は職員

2:1の者の配偶者または三親等内の親族

3:2の者と婚姻の届け出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者

4:2の者のほか、1の者から受ける金銭その他の財産によって生計を維持する者

出典(根拠法令):社会福祉法施行令第13条の2(特別の利益を与えてはならない社会福祉法人の関係者)

社会福祉法人外への対価性のない支出は認められていない

社会福祉法人の社会福祉事業の剰余金(事業活動計算書の当期活動増減差額のプラス分等)は、基本的には本業である社会福祉事業へ充てなければなりません。

ただし、一定の条件のもと法人本部会計や公益事業にも充てることはできますが、法人外への対価性のない支出は認められていません

社会福祉法人は、いわゆる「持ち分」は存在しない

POINT社会福祉法人は、株式会社のような持ち株数に応じたいわゆる「持ち分」は存在しません。

さらに剰余金の配当もなく、解散時の残余財産は社会福祉法人その他学校法人、公益財団法人等の社会福祉事業を行う者、または国庫に帰属することになっています。

そのため、合併契約に基づいて、合併相手法人への金銭の支払う行為や、経済的利益を与える行為は、想定されていません。

社会福祉法人の役員等は、善管注意義務を負っているため、法人に損害を与えた場合には損害賠償責任を、また第三者に生じさせた損害を賠償する責任も負っています。

合併や事業譲渡に係る仲介者を利用する場合の手数料について

令和6年9月19日に発出された「社会福祉法人の事業展開に係るガイドラインの策定について」で合併や事業譲渡に係る仲介者を利用する場合の手数料のことが追記されました。

社会福祉法人の特性を踏まえると、法人として社会への説明責任を果たせるかの観点から、法人の理事会等において仲介者の必要性選定理由の合理性手数料の金額の妥当性を判断する必要がある。

具体的には、業務内容、手数料の算定方法などを確認し、仲介者の業務内容と手数料の金額が客観的に見合っているか判断するとともに、必要に応じて、提示された以外の方法での算定を依頼することや、別の業者の見積又は会計専門家の意見を材料に交渉することなどを検討する必要がある。

出典:「社会福祉法人の事業展開に係るガイドラインの策定について」社援基発0919第1号令和6年9月19日発出

このような記載が追記されてました。

社会福祉法人が合併や事業譲渡などで仲介業者を活用する場合には、

・必要性
・選定利用の合理性
・手数料の妥当性

を判断した上で、活用することが求められています。

まとめ

今回の記事は、

・特別の利益供与の禁止
・法人資産の法人外流出の禁止
・合併・事業譲渡にあたっての仲介者を利用する場合の手数料、いわゆる「仲介手数料」

への考え方について書いてきました。

この部分は、今後社会福祉法人の合併や事業譲渡を進める上で、しっかり知っておかなければならないことで、大前提となる項目になります。

社会福祉法人は公益性と非営利性の両面を兼ね備えた法人として、これらのことをしっかりと順守していく必要があります。

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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