補助金やニーズだけでは危険!社会福祉施設の新設・建て替えを慎重にすべき3つの理由

福祉施設の新設や建て替えを検討する際、補助金の存在や地域ニーズの高まりが後押しとなることが多いです。

しかし、これからの時代、いくら老朽化したからといってこれらの要素だけで建設を進めるのは、経営上大きなリスクを伴います。

むらき

以下に、その主な3つの理由を詳述します。

1. 物価高騰による事業計画の前提崩壊

近年の物価上昇は、運営コストに大きな影響を受けていることはご存知の通りだと思います。

光熱水費や人件費の高騰は、長期的な資金計画に大きな影響を与えてしまいます。

POINTなぜなら、借入を返済する原資となる収支差額が今後もしっかり見込めなくなるからです。

これまでのデフレ時代においては、物価の急激な上昇を見込まなくてもよかったのですが、今後はまた、運営開始後の光熱費や食材費の上昇も、収支計画を圧迫する要因となります。

これらの変動要因を十分に考慮しないまま建設を進めると、経営の安定性が損なわれる恐れがあります。

2. 建設価格の高騰

建物を建てるために借入している場合、今後20年以上など長期的に返済していかなくてはなりません。

建物の建てる段階での事業計画がその通りに進むとは限りません。

建設費用が現状の現預金と借入で賄えるからと建設したりすると、その後の資金繰りに多大な影響を与えてしまいます。

Tips福祉医療機構の調査によると、2023年度のユニット型特別養護老人ホームの平米単価は全国平均で342千円と、前年度から15千円上昇し、過去最高額を記録しました。

また、保育所および認定こども園の平米単価も全国平均で428千円となり、前年度から26千円上昇しています。

これらのデータは、建設費用が年々増加している現状を示しており、建設計画を立てる際には慎重な予算設定が求められます。

3. 人材確保の困難さ

社会福祉分野では、慢性的な人材不足が続いています。
特に地方部では、介護職員や保育士の確保が難しく、新設施設の運営に支障をきたす可能性があります。

POINT”既存施設との人材の取り合いが発生し地域全体の福祉サービスの質が低下する恐れ”、そして”人材確保の見通しが立たないまま施設を建設すると、運営開始後に深刻な人手不足に直面する”というリスクがあります。

結論

負のスパイラルに陥らないために

 

負のスパイラル

①当初計画していた収支差額を原資として返済計画を立てていたが、光熱水費に代表される運営コストの上昇により(収支差が)減り、

②さらに人件費の高騰により減り、

③そうなると人材の確保ができずに慢性的な人手不足に陥り、

④事業の稼働が落ちる、

⑤さらに収入が減る、

⑥ますます人材の確保が困難になっていく。

⑦ますます収入が減る

最終的には資金繰りが困難になっていく。

 

今年、実際このような状況に陥って、破産してしまった社会福祉法人もあります。


その法人もやはり10年前くらいに施設の新設していました。

こんな負のスパイラルに陥らないために、補助金の存在や地域の福祉ニーズは、施設建設・建て替えの動機となり得ますが、それだけで進んでいくのは危険です。

POINT物価や建設費の高騰、人材確保の困難さなど、現実的な課題を十分に考慮し、慎重な判断していきましょう。

長期的な視点で経営の安定性を確保するためにも、計画段階でのリスク評価と対策が不可欠です。

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村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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