ある福祉施設の廃業後の流れ|財産処分手続きの実際

もし、補助事業である福祉施設を廃業する際には、財産処分が必要かもしれません。

ということを以前記事に書きました。▼


では実際に財産処分はどのような流れで進められるのでしょうか。

利用者の減少や収支の悪化、職員の確保など、さまざまな理由から「このまま事業を続けるのは難しい」と考え、事業を廃止することになるかもしれません。

この記事では、ある福祉施設の廃業後の実際のケースをもとに、廃業からから財産処分に向けた手続きと流れを解説します。

財産処分に際してどのような手続きが必要なのか、実際に感じたポイントや注意点を記事にしてみようと思います。

福祉施設の廃業後の流れ

まずは、上の図が廃業〜補助金返還までの流れになります。

POINT1.廃業
2.財産処分申請(法人→自治体)
3.財産処分申請(自治体→国)※国庫補助事業の場合
4.承認
5.財産処分完了報告
6.補助金返還

今回解説するのは、緑枠で囲った「1.閉園」と「2.財産処分申請(法人→自治体)」の部分になります。

1.廃業

1-1.理事会で廃業を正式に決定する

POINTまずは、法人の理事会で正式に決議を得る必要があります。

・廃業の理由(経営状況、環境変化など)を説明する

・廃業後の職員や利用者の対応をどうしたのかしっかり説明する
(事前にしっかりと対応を終えておくことが大切です。)

・施設の財産処分についての方針を決める

理事会に議案が提出されている時点で、「廃業以外の選択肢」などは十分検討した後かと思いますが、今一度廃業にいたる経緯などを説明する必要があるかと思います。

そもそも事業を続けることが法人全体の負担になりすぎる場合など、そんな将来のリスクを考えながら説明して、議決を得ましょう。

1-2.県や市に廃業届を提出(3ヶ月前まで)

POINT廃業を決定したら、所轄庁(県・市)に届け出を出す必要があります。

・県には廃業の3ヶ月前までに届出を提出

・市にも同様の届出を提出

種別ごとに所轄庁が違うことがありますので、事前に確認をしておきましょう。また提出書類についても、事業種別ごとや所轄庁ごとに異なることもありますので、それらも事前に確認しておきましょう。

POINT廃業届の提出の前に、この手続きが遅れてしまうと補助金の返還手続きや財産処分に影響が出る可能性があるため、スケジュール管理が重要です。早めの準備が大切です。

1-3.基本財産の処分について、評議員会にて審議・議決を得る

閉園に伴い、法人が所有する施設や土地などの「基本財産」の処分が必要になります。

POINTこの財産処分には、法人の評議員会での審議・議決が不可欠です。
Tips今回のケースでは、施設が市有地にあったため、解体・更地化して返還する必要がありました

「市有地をそのまま無償譲渡する」という選択肢もありましたが、自治体側の判断で認められませんでした。結果的に、法人が解体費を負担することとなりました。

閉園する施設が自治体の土地である場合、財産処分のルールが厳しくなる可能性があるため、早めに相談することが重要です。

まとめ

今回は、とある福祉施設の閉園〜財産処分申請(法人→自治体)までの実際の流れを書きました。

POINT 理事会で閉園決定を正式に承認
✅ 県や市に3ヶ月前までに閉園届を提出
✅ 基本財産の処分について、評議員会での議決を得る

次回の記事ではこの続きとして、
「3.財産処分申請(自治体→国)」
「4.承認」
についてのポイントをまとめたいと思いますので、こちらもぜひお読みいただければと思います。

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村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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