社会福祉施設を転用・譲渡・廃止する際には、『財産処分』が必要かもしれません|『財産処分』を分かりやすく解説①

『財産処分』についてご存知ですか?

補助金の交付を受けて建てた社会福祉建物等を、譲渡・転用・貸し付け・取壊しする際には、財産処分という手続きが必要になります。

よく理事長さんと今後の事業展開についてお話ししていると、

「うちの施設は金融機関からの借入がないので、いつでも事業をやめられる」

といった声を耳にすることがあります。

POINTしかし、補助金の交付を受けて建設した福祉施設を、本来の目的と異なる使い方をする場合には、事前に「財産処分」という手続きを行う必要があります。

特に、第一種社会福祉事業を行っている法人の多くは、補助金の交付を受けていることが一般的です。

また、「財産処分」には、

・国庫納付が必要ない場合(返納なし)
・国庫納付が求められる場合(返納あり)

の2つのケースがあります。

そのことは、厚労省『合併・事情譲渡等マニュアル』でも、しっかり触れられています。(当該記事リンク)

こうした財産処分については、しっかりと把握し理解しておく必要があります。

これから数回に分けて、法人合併や、社会福祉事業の事業譲渡、転用、撤退による取壊し等を検討する際に必要となる『財産処分』について解説していきます。

社会福祉事業関係の財産処分に係る通知について

ここでは、厚労省所管一般会計補助金等に係る財産処分から引用していきます。
こども家庭庁の通知も内容はほぼ同じです。

そもそも『財産処分』とは何か?

社福経営者Aさん

そもそも財産処分とは何ですか?

むらき

補助金で建設された建物を転用、譲渡、または取り壊す際に必要となる手続きのことです。

通知によれば、

厚生労働省所管一般会計に係る補助金等の交付を受けて取得し、又は効用の増加した政令で定める財産を補助金等の交付の目的に反して使用し、譲渡し、交換し、貸し付け、担保に供し、又は取り壊すこと等を行うに当たっては、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(昭和30年法律第179号)第2条第3項に規定する補助事業者等にあっては、同法第22条に規定する厚生労働大臣等の承認が必要である。

引用:「厚生労働省所管一杯会計補助金等に係る財産処分について」より抜粋(一部省略)

簡単に言うと、

POINT補助金を受けて建設された福祉施設等を、当初の交付の目的以外のものに使用するのであれば、あらかじめ厚生労働大臣等の承認が必要となる

ということです。

このことを総称して『財産処分』といいます。

私たち社会福祉法人が社会福祉事業を実施している場合、その福祉施設は補助金等の交付を受けて建設されたものが少なくありません。

そのような補助金で建設された建物を転用、譲渡、または取り壊す際に必要となる手続きが「財産処分」です。

財産処分の種類

むらき

財産処分には6つの種類があります。

引用:「厚生労働省所管一杯会計補助金等に係る財産処分について」より抜粋

POINTこのように財産処分は、
①転用
②譲渡
③交換
④貸付
⑤取壊し
⑥廃棄

上記6つの種類に分けられます。
Tips

・社会福祉法人が補助金の交付を受けた建物等を別な目的に使用する場合(他の社会福祉事業等へ事業転換する場合)は「転用」

・事業譲渡や法人合併で建物の所有者が変わる場合は「譲渡」

・補助金を受けた建物を他法人など異なる事業主体に貸す場合は「貸付」

・事業を廃止して建物を取り壊した場合は「取壊し」、その設備などを処分した場合は「廃棄」

財産処分の承認には、国庫納付に関する条件を付して承認する場合と、付さずに承認する場合がある

POINT財産処分の承認には、

・国庫納付に関する条件を付して承認する場合 
付さずに承認する場合

があります。


社福経営者Aさん

「国庫納付に関する条件」?つまりどういうことですか?



むらき

国庫納付に関する条件を付して承認する場合というのは、つまり「交付された補助金の残存年数分を国庫納付(いわゆる返納)する必要がある」ということです




すなわち、

POINT補助金が交付されたそれぞれの建物や設備の処分制限期間(法定耐用年数とほぼ同じ)の経過年数を引いて、その残った分を現金にて国庫に返納する

というルールがあります。


社福経営者Aさん

国庫納付に関する条件が付く場合(返納あり)と付かない場合(返納なし)は、どんなルールで決まるんでしょうか?


むらき

次回の記事にて、詳しく解説します!


▶︎この記事の続きの記事はこちら(後日更新)

まとめ

 事業譲渡や法人合併、事業の廃止などを検討している方は、補助金で建設された社会福祉施設を目的外で使用する際に、「財産処分」が必要になることをしっかり認識しておきましょう。

国庫納付が必要になる場合のルールや納付額の算定方法、財産処分の適切なタイミングについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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