今、みなさまから多く寄せられているご相談について― 保育所の閉園、法人の解散と国庫補助金の返納(財産処分)の考え方について ―

最近、 社会福祉法人の経営者さまから「 閉園や閉所に関するご相談」をいただくことが増えています。

なかでも特に多いのが、

事業継続が困難となっている現状のなかで、国庫補助金を活用して整備した施設を、今後どう扱えばよいのか、財産処分ルールのことが分からない

というお悩みです。

出生数の減少、職員確保の困難さから、事業継続がかなり厳しい状況に陥っている施設や法人からの相談が増えています。

自分たちの法人や事業が事業継続が困難であるという状況であるという本当に厳しい状態におかれている法人さんや、事業譲渡や法人合併を視野に入れたくとも、そもそもの福祉ニーズが存在しなければ、それらも進められない(譲渡先がない)という状態におかれている法人さんもおります。

今回は、 実際に寄せられたご相談をもとに、 国庫補助金等で整備した事業の廃止・法人の解散をめぐるお悩みとそれに対する私の考え方をできるだけ分かりやすく整理します。
※ご相談の内容は、相談者の了解のもと、法人や地域を特定されないよう一部変更しています。

今回のご相談内容

ご相談内容

私たちは、一法人一施設で保育事業を行ってきました。

数年前(10年以内)、建物上の問題が見つかり、やむを得ず新しい園舎を整備しました。
その際には、補助金を活用しています。

しかしその後、少子化の影響を大きく受け、利用者数は年々減少してきました。
現在の利用人数も少なく、来年度はさらに減る見込みです。

このままでは事業の継続は難しいと感じています。

国庫補助金を使っている以上、原則として10年間は事業を継続しなければならないことは理解しています。
ただ、今の状況で10年先まで事業を続けられる見通しは立っていません。

もし、10年を待たずに事業を廃止した場合、国庫補助金の返還は必ず必要になるのでしょうか。

また、法人を解散した場合や、地域で活用できる形を提案し、施設を無償で譲渡した場合でも、返還は発生してしまうのでしょうか。

行政とも相談しながら進めていますが、法人としてなかなか結論を出すことができずにいます。どのように考え、どの方向を選ぶべきでしょうか。

私の回答の前提として

まず、今回のご相談に回答するうえで、大切な前提があります。

それは、

「事業の継続が困難である」と質問者さまが感じていらっしゃる

という点です。

POINTそのため、
「事業を廃止する場合、法人を解散する場合はどのような整理になるのか」という点に重心を置いて、回答させていただきます。

事業廃止時に補助金等の返還は必要か否か?

保育所の現状として、事業の継続が困難である(保育所の廃止もやむなし)ということを前提とするならば、

POINT保育事業を廃止(廃業)し、法人を解散・清算することで、返納(国庫納付)は回避される可能性があります。

10年未満での社会福祉事業(保育所等)の廃止・譲渡について

もし、10年を待たずに事業を廃止した場合、国庫補助金の返還は必ず必要になるのでしょうか。
(中略)
地域で活用できる形を提案し、施設を無償で譲渡した場合でも、返還は発生してしまうのでしょうか。

こちらのご質問に関してですが、
国庫補助金を活用して整備した施設については、原則として10年間の継続運営が求められています。

そのため、

10年を経過する前に
・事業を廃止する
・施設を譲渡する

といった場合には、返還(国庫納付)が必要です。


譲渡の形について

「地域で活用してもらう形にして、施設を無償譲渡すれば・・・」

質問者さまのお気持ちはとても自然なものだと思います。

POINTですが、財産処分のルール上は10年以内であれば譲渡の形(無償・有償かかわらず)そのもので、返還義務を左右するものではないという点に注意が必要です。

 

 

▼財産処分に関しては、こちら『財産処分』シリーズで詳しく解説しています。
こちらのシリーズは多くの方に読んでいただいています。

今回のご相談いただいた法人は、「一法人一施設」とのこと

今回のご相談いただいた法人さんは、【一法人一施設】です。

この場合は無償譲渡をするしないに関わらず、保育事業を廃止するとなれば、法人が実施している事業そのものが存在しなくなります。

そのため、

POINT法人を存続するのであれば、当該施設にて別な社会福祉事業を新たに行う →返還義務はそのまま
②今後、
保育事業等の社会福祉事業を行わない場合は、法人の解散・清算の手続きへ(※)

大きくこの2つの選択に分かれます。

解散となるためには、福祉医療機構や金融機関等からの借り入れ等がないことが前提となります

①法人を存続させる場合

POINT法人を残す場合は、別の社会福祉事業を行う必要があります。
この場合、法人は存続するため、国庫補助金の返還義務はそのまま残ります。

②法人を解散・清算する場合

解散・精算を選択された場合には、その補助金分も清算となる可能性が高いです。

解散となった場合、貴法人の財産や債務等を諸々清算したあとの残余財産(建物等の不動産や什器備品、預貯金等)は、最終的には国庫に帰属することになっています。

POINTこの清算の過程で、国庫補助金等特別積立金も清算されるという整理になります。

(実際の法人の解散・清算手続きに関しては、事業実施地域の所轄庁との協議となるかと思います。)

まとめ

以上のことから、今回のご相談に関しては、

POINT保育所の事業を廃止し、法人を解散することを前提とするならば、清算過程のなかで国庫補助金分も清算されることになる可能性がある

というのが、私からの回答となります。

本記事でお伝えしている内容は、あくまで一つの考え方であり、実際の判断や手続きは、法人の状況や行政との協議内容によって異なる場合があります。

最終的な判断は、必ず所轄庁等関係機関と確認しながら進めていただければと思います。

これまでに寄せられたご相談について

今回ご紹介したケース以外にも、講演や勉強会の場において、たくさんの方からご質問をいただいております。

特にお問い合わせの多い内容については、ジャンル別にまとめて公開していますので、こちらもぜひ読んでいただければと思います。

同じような状況にある方にとって、ご参考になれば幸いです。

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村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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