【質問回答2】人材確保が困難な「供給制約」と、出生数減少などの「需要消失」にどう備える?|社会福祉法人の中長期的な戦略にまつわるQ&A

「利用者が減少し、事業を続けられるか不安…」
「業界の今後の展望はどうなっていくんだろう」

社会福祉法人や社会福祉事業を経営している皆さんにはさまざまなお悩み課題があるかと思います。

この質問回答シリーズでは、セミナーなどで皆様から寄せられたリアルなお悩み、疑問や質問にお答えしていきます!

今回は、「社会福祉法人の事業継続」と「今後の展望」などについて一問一答形式でまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

 

もくじ
  1. 事業継続に関する質問
  2. 今後の展望についての質問
  3. 事業の最適化についての質問
  4. 法人運営についての質問

事業継続に関する質問

Q1. 利用者の減少と職員確保が難しい中、事業を継続するためにはどうすればよいですか?

まずは、多角化多機能化を図っていくことから始めてはいかがでしょうか。

例えば、
介護事業と障害福祉サービスの連携
保育施設と学童保育の併設 などです。

 事業の方向性を柔軟に見直しながら、経営基盤を強化していきましょう!

Q2.職員50人規模の介護事業者です。経営者の高齢化により事業継続が心配です。他事業者との連携等、中期計画を立てる上でアドバイスをお願いします。 

事業継続していくための前提として「事業承継」があることを考えると、それは心配ですね。

①他事業者との連携を考えているのであれば、
✅円滑なコミュニケーションがとれるような関係性づくり
②中期計画では、
職員・利用者の確保戦略の見直し(採用計画・人材育成の仕組みづくり)
法人の理念や将来像の再確認(今後どのような法人でありたいかを明確にする)
事業の方向性を見直す(これまでの運営スタイルが今後も最適かを検討)

など、「これまでの延長線上でこのまま進めてよいのか?」 を問い直すことも、中期計画を考える上で大切なポイントです。

今後の経営戦略をしっかりと整理し、早めの対策を進めていきましょう!

Q3. 事業継続を考える上で、「社会福祉法人」としての使命はどのように捉えればよいでしょうか?

「社会福祉法人としての使命」と考えると、少し抽象的に感じるかもしれません。
そこで、
まずは「ご自身の法人」にとっての使命を考えてみることが重要です。

一つの方法として、「もし自分たちの法人がこの地域になかったらどうなる?」と想像してみると、法人の存在意義がより明確になるかもしれません。

Tips

地域にどんな影響があるか?
利用者やその家族、職員にとってどんな変化が生じるか?
地域福祉において、自法人が担っている役割とは?

こうした視点から考えることで、自分たちの法人が「この地域でどうありたいのか?」というビジョンがより鮮明になります。
事業の継続を検討する際には、「社会福祉法人として何を果たすべきか?」だけでなく、「この地域において、自分たちが果たすべき役割とは何か?」を具体的に考えることが大切です。

Q4.少子化が進む中で、保育所の事業を継続するためにどのような対策がありますか。

こちらはとても深刻な問題であると、私自身も経験から認識しております。

今後も事業を継続していくためには、新たな価値を提供し、地域のニーズに柔軟に対応することが重要だと感じています。

POINT「従来の保育所の枠にとらわれない、時代の変化に合わせた柔軟な対応」 が、事業継続のカギになると思っています。
セミナーなどでは具体的な方策についてお話しております。詳しくはお問い合わせください

Q5. 人材不足や物価高騰等の影響で今後も厳しい経営になるのではないかと感じています。ICT導入を進め、職員の負担軽減に成功していますが、人員の削減には繋がっておらず、経費も増しています。今後の経営に明るい未来が描けないのですが、社会福祉法人には今後どのような経営力が必要だとお考えでしょうか。

まずは、職員の負担軽減に成功されているのはとても素晴らしいことです!

おっしゃるとおり、様々な機器のイニシャルコストが大幅にかかる割には、その効果は、夜勤職員配置加算の基準緩和くらいで、人員削減まではいかないというのも、共感いたします。

「今後の経営に明るい未来が描けない」ということですが、たしかにこれまでやってきた延長線上での経営という意味では私も同様に感じています。

ですが、福祉ニーズが全くなくなるようなことはないと思いますし、むしろ新たなニーズが生まれる可能性もあります。

そういったことを法人や施設で拾えるようにしていく、さらに社会福祉事業以外の事業も視野にいれていく必要があるのではないかと思います。

Q6.社会福祉法人の取り巻く環境は、関西や関東、地方や都会といった地域性の違いはありますか。

地域によって、社会福祉法人を取り巻く環境は大きく異なります。

かつては全国的に同じ基準で考えられていましたが、今後は「全国一律」や「ワンイシュー(単一の課題)」で論じること、またそれを前提とした事業展開は非常に危険だと考えています。

「供給制約」と「需要消失」が地域ごとに異なる形で発生する(まだら模様に並列する)時代に突入しています。
そのため、法人運営においても、国の大きな方針だけを見るのではなく、「地域の実情に合わせた戦略」が必要不可欠です。

Q7.事業継続で最優先に考えることは何でしょうか。

シンプルに申し上げますと、

まずはその事業への需要があるのか
そして、需要を満たすために供給ができるのか

が大切だと思っています。

これまではどちらかといえば、「需要」に重きを置いて事業展開をされてきたかと思いますが、今後はそもそも需要があるのか、いつまでその需要が続くのか、さらに(人員など)供給できるのかをまずはじめに考える必要があるのではないかと思っています。

Q8.社会福祉法人として地域貢献を進めながら、事業の拡大や継続を効率的に進めるにはどうすればよいですか?

私は、地域貢献と事業の継続は、別々のものとして捉えるのではなく、一体的に考えることが重要だと思っています。

例えば、私たちの法人では「特養の厨房機能を地域に解放する(=お弁当の配達)」といった取り組みをしておりますが、それは地域貢献であると同時に、以下の効果もあります。

法人の認知度・評判の向上 → 地域の方に法人の価値を知ってもらう機会になる
新たな人材確保のチャンス → 「ここで働きたい!」と思う人が増えれば、採用にもつながる
事業の多角化・収益の安定化 → 地域向けサービスを展開することで、新たな収益源の確保も可能

うちで働きたいと思っている方が一人でもでてきてもらえれば、それだけでも事業継続につながっていくと考えています。

今後の展望についての質問

Q1.社会福祉法人も「病床再編」のように、再編を公的に進めるべきでは?国の方向性があれば知りたいです。

今回の令和6年度補正予算における病床再編(病床を削減すると、一床あたり約400万円を支援する)の方策を見て、「社会福祉法人でも、同じような公的な再編があれば…」と感じた方も多いと思います。私自身も、その考えには共感しています。

POINTただし、医療制度と社会福祉法人制度(や各種事業制度)は、制度の成り立ちや仕組みがまったく異なるため、同じようなスキームをそのまま導入するのは難しいのが現実です。
ですが、繰り返しますが、その不公平感、我々福祉業界との落差への思い、気持ちはとてもよく分かります。

Q2. 社会福祉法人も変化し続けなければ持続できない時代。対応できていない法人の未来はどうなるのでしょうか?

ご質問の背景にある強い危機感と、「このままではいけない」という思いに、私も深く共感します。
地方では人口減少が加速し、これまでと同じやり方では立ち行かなくなる場面も確実に増えてきます。

「変化に対応している法人」と「そうでない法人」の未来はどうなるのか?
これは非常に重要な問いですが、実際には法人ごとの地域性や事業環境が大きく異なるため、ひとくくりに語ることは難しいです。

とはいえ、

POINT✅ 新しいことに挑戦する姿勢は不可欠
✅ しかし、地域のニーズと合致しない「ただの新規事業」は継続が難しい

これだけは言えるかもしれません。

つまり、「何か新しいことをやる」こと自体が目的になるのではなく、
自分たちの法人がこの地域でどうあるべきか、何を果たすべきかというビジョンを持ち、そのために変化し、挑戦し続けることが大切だと感じています。

すでに問題意識を強く持たれているあなたのような方が、地域に新しい風を吹かせてくれると信じています。

Q3.地方における保育事業の将来を、どのように見ていますか?

正直に申し上げて、地方の保育事業は今後ますます厳しくなると感じています。
実際、私たちの法人も今年度(令和6年度)、保育事業から撤退しました。

POINTただし、すべての園がなくなるわけではありません。
だからこそ、今後は「選ばれる園」になることが大切だと思います。
Tips・うちの園の“特徴”は何か?
・どんな“保育理念”を大切にしているか?
・保護者にとって“負担の少なさ”はどうか?
・園児や地域にとって、どんな“価値”を提供しているか?

こうしたことを自分たちで言語化し、発信していくことで、他の園との差別化にもつながります。

厳しい時代だからこそ、自園の強みや魅力を見つめ直すことが、継続への第一歩になるはずです。

事業の最適化についての質問

Q1.事業を見直すとき、判断の基準や“物差し”になる考え方があれば教えてください。

とても本質的なご質問だと思います。

ただ、正直に申し上げると、一律に使える“物差し”は存在しないというのが私の実感です。

POINT

今は「供給制約(人材不足など)」と「需要消失(少子化など)」が、地域ごとにまだらに現れている時代です。
つまり、地域によって事情も課題もまったく違うということです。

さらに言えば、法人ごとに持っている資源や強み、そして大切にしている理念やビジョンも異なります。

だからこそ、「何を守り、何を伸ばしていくのか?」という問いを、自分たちの現場に引き寄せて考えることが大切になってくるのではないでしょうか。

Q2.地方都市で少子化が進行するなか、社会福祉法人はどのように対応していくべきでしょうか?

少子化・人口減少が進む今、事業の継続に悩みを抱えている法人は少なくありません。

POINT

ですが、人口が減る=福祉ニーズがすべてなくなるというわけではない、という視点も大切です。

まずは、

・自法人が地域において「どんな強み」を持っているのか

・どんな「思い」をもって取り組んできたのか

こういったことを、一度立ち止まって見つめ直してみてはいかがでしょうか。

その中で見えてくる“自分たちらしさ”こそが、今後の事業を続けていく上での原動力になるはずです。

Q3. 消滅可能性自治体にある認定こども園を運営しています。(出生数やこどもの数の)母数が少ない中で、法人としてどう存続していけばよいのでしょうか?

非常に切実なご相談ですね。

私たちの法人でも、同じような状況から保育所を閉園し、その旧園舎を活用して児童発達支援・放課後等デイサービス・学童保育を始めた経験があります。

正直、始める前は「本当にニーズがあるのか?」という不安が大きかったです。
ですが、事業を立ち上げたことで、それまで見えなかった潜在的なニーズが“顕在化”したという実感があります。

さらに、

保育所と児童発達支援ではサービス対象が違うこともあり、想定していなかった広域の地域から利用者がいらっしゃった

という“想定外の反応”もありました。

POINTですので、最初から「母数が少ないから無理だ」と決めつけるのではなく、
リサーチを重ねて、小さな可能性を拾い上げていくことが大切だと思います。

そんな目線で、視野を広げてみてはいかがでしょうか。

法人運営についての質問

Q1. 法人の適正な運営や経営課題への対応には本部機能の強化が重要だと思います。本部への繰り入れや本部人件費の対応について、どのように進めるべきでしょうか?

まずは、本部がどのような役割を担うのかを明確にすることが大前提だと思っています。

そして、制度として各種別に応じた繰り入れルールが異なりますので、そのルールに基づいて繰り入れをするのがよいのではないでしょうか。

ただし、「老発188号通知」のように、比較的資金の繰り入れが自由な介護保険施設などでも、明確なルールがあるため、それらに注意する必要はあります。

Q2.社会福祉法人の事業経営において、今後考えられるリスクにはどのようなものがありますか?

私はこれからの社会福祉法人をとりまく事業環境を、『「供給制約」と「需要消失」がまだら模様に並列する時代へ』という表現をしておりますが、たとえば児童関係の事業であれば、

「需要消失(=園児の絶対数が減っていく)」が今後のリスクとして考えられると思っています。

今後は、「需要が減る事業」と「人材不足で供給が難しくなる事業」が地域ごとに異なる形で発生するため、単一のリスクではなく、多角的な視点で事業戦略を考えていくことが必要だと思っています。

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村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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