これからの物価上昇・インフレのなかでの福祉事業経営を考えよう

今後5年くらいの中期的には、物価上昇・インフレのなかで事業経営をしていかなければならない

社会福祉事業を経営するなかで、今後5年ほどの中期的に大きな経営課題になると思っているのが、物価上昇・インフレです。

実際2022年から2023年にかけての電気代など光熱水費の高騰や食材料費の上昇は記憶に新しいのではないでしょうか。
インフレが我々の経営にかなり影響してしてきています。

インフレを計る指標である消費者物価指数(CPI)の推移を見てみると、2020年比で2021年まではほとんど変化のなかった指数が、2022年を境に上がり続けています。

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総務省統計局:2020年基準消費者物価指数:全国 2024年(令和6年)6月分

この傾向が今後どんなふうに推移するかはしっかりと見ていかなければなりません。

今回の物価上昇・インフレがなぜ起こったのか、その背景を社会情勢と(アメリカの)金融政策の側面からざっくりと共有していきます。

私は経済学者でもなく、単なる福祉事業経営者なので、正しくないこともあると思います。

しかし、そういう社会の変化(インフレ)がどのようなプロセスで起こったのか、順を追って論理的に考えることはとても重要だと思っています。

過去の歴史と照らし合わせたり、それが今後どのように推移するか、どの程度続くのか、予測することにも役立つからです。

私のざっくりとした解釈は以下のとおりです。

1.コロナ禍による社会経済活動の停滞による混乱を避けるため、世界中で金融緩和と積極財政の措置がとられ、流動性が供給される。

>>図表で見る米連邦公開市場委員会(FOMC) (thomsonreuters.com)

FFレート(誘導目標金利):2020年2月1.75%→3月0.25%ゼロ金利政策スタート

2.コロナウイルスへの社会経済活動の制約・制限が解除され、経済活動が再開される
⇒アメリカでは様々な需要が急拡大、完全雇用状態(人手不足)、景気が過熱する

アメリカの雇用統計を見ると、2021年6月くらいから一気に失業者が減り続けている(経済活動再開)。

さらにアメリカの消費者物価指数(CPI)も同じ時期から上昇しているのをみてほしい。

「ウッドショック」という言葉にでてきましたが、「戸建て需要が拡大⇒供給不足⇒木材価格が大きく値上がり」するという状況も、このあたりからでてきました。

また日本の消費者物価指数が上昇傾向になり始めた2022年初頭からです。

4.景気の過熱と急激なインフレを阻止するため、ゼロ金利解除(2022年3月~断続的に引き上げられる)

POINT・アメリカ消費者物価指数(CPI)の最高値:2022年6月9.1%!
・FFレート:2022年3月~ゼロ金利解除その後断続的に利上げが続く
・2023年8月には5.5%まで引き上げ(2024年8月18日現在も続く)

5.日本とアメリカの金利差拡大⇒円安へ⇒輸入価格高騰⇒さらなる物価上昇へ

2023年3月にアメリカのゼロ金利が解除されると同時に、ドル円の為替も一気に円安が進んでいます。
アメリカのFFレート上昇とドル円の円安傾向は相関しています。(あたりまえですね)

その他の要因として、

POINT・日銀は黒田前総裁時代から「安定的に2%の物価上昇を実現する」ことを目標の一つとした異次元の金融緩和を、コロナ禍以前から行っていたこと

中国の「ゼロコロナ政策(~2022年12月)」によるサプライチェーンの停滞

・ロシアによるウクライナへの侵攻による資源価格上昇

というのも複合的に関係している。

ここまでが、本当にざっくりだが、私の理解だ。

余談だがこの論理の元になっているのは、1970年代のいわゆる「狂乱物価」と呼ばれた物価高騰・インフレが起きた原因への分析からだ(ちなみに私は生まれてない)。
そのこともいずれ書きたいが、そのときの状況と今の状況はシンクロしてくる。というか、いつでも大体同じ構造だ。

これを書いている段階(2024年8月18日)では、ここ数か月にわたって円安を是正するための為替介入を何度か行い、日銀が金利を上げる(それでも0.25%だが)決定がなされ、円高にふれ、さらに株価も過去最大の下落(2024年8月5日)も記録している。

さらに今更、日本の政策金利を仮に1%上げたとしても、アメリカとの金利差は以前として大きい。それでは円安の傾向そのものは変わらないのではないでしょうか。
(ただ、現在アメリカ側で景気減速が議論されていて、金利を下げる議論がされている。)

▼ちなみに下記リンクは、「物価高騰を是正しろ」という世論もふまえて、政策金利が上がると、どうなるのか、財政当局が抱える矛盾について書いてみたものだ。

こうした社会・経済情勢のなかでインフレという傾向は、この先数年(私は5年くらいと予想)変わりにくいのではないかと思っています。

なぜなら、歴史的には一度上がった物価が元に戻ることはほぼなかったからです。

この25年のほうが異常だったと考えられるのではないでしょうか。

ではこうしたインフレ下のなかで、どのようなことに注意して福祉事業を経営していけばよいのだろうか。

こちらの記事に続きます。

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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