『合意形成』~社会福祉法人の吸収合併のための手続き その1〜

社会福祉法人の吸収合併には、まず「合意形成」を行うことが最初のステップとなります。

この記事では、合意形成のプロセスを具体的に見ていきましょう。

合意形成の流れ

以下は「合意形成」の具体的な流れと概要です。

POINT

①秘密保持契約の締結
相手法人と秘密保持契約を結び、各法人の理事会で承認を得ます。

②合併法人間での事前協議
合併に向けて事前協議を行い、合意形成を進めます。

③基本合意書の作成・締結
合併契約の前に、合併条件を定めた「基本合意書」を作成し、双方で合意を確認します。

④吸収側法人は「将来事業計画」を作る
合併後の運営方針を明確にするため、将来の事業計画を策定します。

1.秘密保持契約の締結

合併に向けた話し合いを始めるにあたり、まず双方の法人が秘密保持契約を締結します。

これは、協議の中で交換される情報を第三者に漏らさないためのもので、法人間での信頼を築く重要なステップです。

POINT秘密保持契約には理事会の議決が必要で、正式な書面として取り交わされます。

2.事前調整(事前協議)

合意形成を進める中で、事前調整はとても重要なプロセスです。

合併後の円滑な運営のために、各法人が合併の目的や今後の事業計画について詳細に話し合うことが必要です。

具体的には以下のような取り組みを行います。

実務担当者による協議の場を設ける

合併に向けた準備の一環として、各法人の実務担当者が集まり、合併検討委員会を設置すると効果的です。

この場で具体的な手続きを話し合うことで、各法人が一体となって準備を進め、スムーズな合併につなげられます。

むらき

その際の具体的な協議内容についても、いずれ記事にしていきますので、少しお待ちください。

この段階から所轄庁に相談を

事前調整の段階から、所轄庁に相談しつつ進めることで、行政手続きが円滑に進みやすくなります。

所轄庁の指導や助言を受けることで、法的な問題が発生しないよう対応を進められます。

むらき

所轄庁によって、提出する書類が異なったり、独自の書類を提出しなければならないこともあります。できるだけ早めに相談するようにしましょう。

3.吸収側法人の将来事業計画の策定

吸収側の法人には、合併後の方向性を明確にするため、将来の事業計画を策定することが望まれます。

これにより、合併後の事業活動が円滑に進むだけでなく、関係者に対しても安心感を与えます。

将来事業計画を作成する際は、

・合併や事業譲渡後にどのように事業を進めていくか
・複数年にわたる具体的な計画(事業内容や収支見込みなど)

などを立てる必要があります。

この計画は主観的なものではなく、根拠に基づいた合理的な内容であることが重要です。

作成時には次の点をチェックしましょう!

POINT

・法人の理念や合併・事業譲渡の意図が反映されているか

・事業戦略(サービスの提供方法など)、人事戦略(給与制度や採用計画)、財務戦略(資金調達や資金の使い道)との整合性が取れているか

・計画内容が具体的な数値で示され、合理的であるか

・根拠が明確に示されているか

・社会福祉充実計画など、他の計画と矛盾していないか

既存事業を今後どうしていくのか

合併後の既存事業の方向性についても、この段階で話し合います。

事業をどのように継続・発展させるか、あるいは再編するのかを検討しましょう。

合併後の法人にとって最も有益な形を模索します。

むらき

仮に社会福祉事業を重複して実施することになってしまう可能性もあります。その場合は将来の事業の再編も考慮する必要があるでしょう。またその地域の福祉サービスの提供体制も考えながら検討していきましょう。

4.基本合意書の作成・締結

事前調整で合意が得られた内容をもとに、合併の基本合意書を作成します。

POINTこの合意書には、合併の目的や条件、基本的な方向性などが含まれ、合併契約書のベースとなります。

これは双方の法人間で合意を確認し、内容を確定させるための大事なステップです。

基本合意書で整理すべき項目

合併契約の締結までに、法人間で合併条件の大枠を記録し、詳細な協議を進めると効率的に作業が進みます。

基本合意書には、以下の内容を整理して記録するのが望ましいです。

POINT

・合併の目的と合併後の理念
・吸収される法人の事業を存続するか否か
・合併後の役員選任と職員処遇の方針
・その他、互いの法人の要望

まとめ

今回は、合意形成のステップについて解説しました。

まずは秘密保持契約を締結し、情報管理の基盤を整えた上で、各法人間での事前協議を行いましょう。

吸収側法人には、将来事業計画の策定が求められ、合併後の方針や目標が共有されることで、合併の準備がスムーズに進められます。

また、合併条件の大枠を定めた基本合意書を締結することで、両法人が同じ目標に向かって進むための基盤が整います。

手続きに迷った場合や、不明点がある場合は、ぜひ当コンサルサービスにご相談ください!

専門のサポートで、あなたの法人に最適な選択をお手伝いします。

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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