『規定・システム(アプリ)などの整備』社会福祉法人の吸収合併のための手続き その13〜

本記事では、厚労省「合併・事業譲渡等マニュアル」に基づき、

 この記事の内容・社会福祉法人の吸収合併後の各種規程やシステムの整理・統合方法
・委員会の運営や名義変更時の注意点

を詳しく解説します。

▼今回解説する「規程・システム(アプリ)などの整備」の前段階である「利用者や利用者家族、地域への説明」については、以下の記事をごらんください。

実施事項

「規程・システムなどの整備」においての実施事項は、以下の4つです。

POINT1.各種規定、マニュアルなどの整理・統合
2.委員会などの運営検討
3.各種システム(アプリ)の整理・統合
4.名義変更
5.利用者契約や重要事項説明書の統合

引用:厚労省「合併・事業譲渡等マニュアル」より

1.各種規程、マニュアルなどの整理・統合

社会福祉法人の吸収合併に伴い、存続法人と消滅法人、各々が持つ業務マニュアルや規程類の統合・整理が必要です。

この統合を怠ると、現場で混乱が生じたり、職員間で不公平感が生まれる可能性があります。

POINTそれぞれの法人が独自に運用していた規程を一元化し、合併後の法人全体で共有できる形に整えることで、運営の効率化と公平性が向上します。

1-1.主な対象となる規程やマニュアル

整理・統合の対象となる主な項目は以下のとおりです。

POINT・業務マニュアル
・就業規則
・経理規定
・その他の規定

以下でひとつずつ解説します。

業務マニュアル

各事業所でのサービス提供の手順や管理方法を示すマニュアルです。
これらが統一されていないと、現場で混乱が生じる恐れがあります。

経理規程

予算管理や会計処理に関するルールです。
法人間での異なる基準を整理し、透明性の高い財務管理を実現します。

その他の規定

そのほかにも、例として以下のものがあります。

Tips・研修
・災害対応
・個人情報保護 などに関する規定

上記の統一も重要です。

POINT規程やマニュアルを整理・統合する際には、双方の法人がこれまで運用してきた内容を比較し、どのルールを採用するかを慎重に検討しましょう。
むらき

これらの規程やマニュアルの整理・統一はとても重要です。しかもそのタイミングは法人間での合併への合意形成が図られたあと(または合意形成が図られる前からでも)すぐに始めた方がいいでしょう。これらの統一やすり合わせが、合併そのものや、継承されたあとの円滑な事業経営に必要不可欠のためです。

2.委員会などの運営検討

法人内で運営している委員会についても、合併後の整理・統合が必要です。

Tips特に、同じテーマの委員会で名称や内容が異なる場合、統一を図ることが求められます。

2-1.委員会テーマや名称の統一

各法人で運用されている委員会のテーマや役割を整理し、法人単位や事業種別(介護・障がい・保育など)で一元化します。

必要に応じて、サービス区分(事業所単位)に合わせて名称や運用方法を見直し、規定の修正を行います。

規定統合委員会の設置

POINT規定や委員会を統合する際には、「規定統合委員会」を設けるのが有効です。

この委員会には、双方の法人から実務責任者や実務担当者を集め、具体的な検討を行います。

現場で実際に運用されている内容を把握し、統合に向けた課題を共有する場として活用することができます。

むらき

特に合併する側の法人にとって、合併する法人がどのような規定に基づいて事業を行っていたのか、そしてそれらをそのまま統一できるのか、そういったことを議論する場があることはとても重要ですね。

3.各種システム(アプリ)の整理・統合

吸収合併前の法人がそれぞれ使用していた業務システムも統合の対象です。

システムを統一することで、業務効率の向上やコスト削減が期待できます。

対象となるシステム◾️業務記録システム
利用者のサービス提供記録や報告書作成に使用されるシステム。
統合することで情報共有がスムーズになります。

◾️経理・会計処理システム
合併後の財務管理を効率化し、透明性を向上させます。


◾️勤怠管理・給与管理システム
職員の勤務時間や給与計算を一元化することで、運用の手間を削減します。

システムを統合する際には、機能や操作性、導入コストを比較し、最適な選択を行いましょう。

Tips経理システムや情報システムの統合には時間がかかるため、システム会社の協力を得て早めに準備を始めましょう。

ホームページなど外部向けの情報発信媒体についても検討が必要です。これらの作業は段階的に進めることも視野に入れて計画を立てましょう。

また、データ移行や職員への操作研修を計画的に進めることも大切です。

むらき

これらシステムやアプリの統一が図られなけば、合併の相乗効果が発揮されなくなりますので、とても重要です。ですが、統一を図ることと同時に、現場においてそれらシステムやアプリに慣れるための研修や期間も必要です。そのこともしっかり認識していきましょう。

4.名義変更

吸収合併後、法人名が変わることで、さまざまな名義変更が必要となります。

名義変更の対象の例◾️銀行口座や不動産登記の名義
合併後の法人名に合わせて名義を変更します。

◾️各種契約書類
リース契約や保険契約など、法人名義で締結されている契約書も変更が必要です。

◾️登録証明書やライセンス
各種認可やライセンスの名義変更も忘れずに行いましょう。

4-1.名義変更時の注意点

POINT名義変更は、所轄庁の認可を経て登記が完了してから行うのが望ましいです。

その理由としては、「名義変更には現在事項証明書が必要な場合が多いため」

ですので事前に必要書類を確認しておきましょう。
不備があると手続きが遅れる可能性があるため、慎重に進めることが大切です。

▼「所轄庁の認可」については、以下の記事で詳しく解説しています。

5.利用者契約や重要事項説明書の整備

こちらはマニュアルには記載されていませんが、合併後は利用者契約書や重要事項説明書の整備・統合も必要です。

特に、利用契約に関する内容を見直し、新しい法人名での再契約を行うことで、利用者との信頼関係を維持することができます。

まとめ

今回は、「規定・システムなどの整備」について解説しました。

合併後の法人運営を円滑に進めるためには、規程や委員会、システムの統一が欠かせません。
また、名義変更や利用者契約の整備といった実務的な手続きも重要になります。

これらを計画的に進めることで、職員や利用者に安心感を与え、合併後の運営をスムーズに進めることができます。

規定統合委員会の設置や専門家の協力を得るなど、効率的な方法を取り入れながら準備を進めましょう。

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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