社会福祉事業における財産処分での「転用」とは何か?|財産処分を分かりやすく解説③

こんにちは、村木です!

前回の記事【財産処分を分かりやすく解説②】では、

前回のおさらい・財産処分の適用ルールを判定するポイント
・国庫納付(返納)が必要となる場合と、不要となる場合がある
・処分後に施設や設備が特定の福祉事業に転用される場合には、国庫納付が不要となる可能性がある

ということを解説しました。



今回はその続きとして、財産処分の一例である「転用」にフォーカスし、

この記事の内容転用の際に国庫納付が不要となる(可能性がある)事業とは

について、分かりやすく解説していきます。

 

財産処分における転用とは

社福経営者Aさん

そもそも転用とはどういうことでしょうか?



むらき

転用とは、補助金を受けた財産を別の福祉事業等で再活用することを指します。


POINT転用とは、社会福祉法人が補助金の交付を受けた建物等を別な目的に使用すること(他の社会福祉事業等へ事業転換する場合)です。

むらき

今回、「転用」をピックアップした理由は、国庫納付が不要になる条件の一つとして「(10年以上補助事業を継続した上で)転用先が特定の福祉事業であること」があるからです。

POINTそれらの事業に該当すれば、返納を避けられる可能性が高まるため、財産処分の中でも非常に重要なポイントとなります。

例えば、ある社会福祉法人が高齢者向けの施設を運営していた場合、その施設を子どもや障がい者向けの福祉事業に転用する場合は、承認条件によって国庫納付が不要になるケースがあります。

社福経営者Aさん

そうなんですね、詳しく知りたいです!


むらき

さっそく、「特定の福祉事業(”別表に掲げる事業”)」の具体例を見ていきましょう!

別表に掲げる事業」とは

厚労省「厚生労働省所管一般会計補助金等に係る財産処分について」には、

転用、無償譲渡又は無償貸付の後に”別表に掲げる事業”に使用する場合は、国庫納付に関する条件を付さずに承認する(返納不要)

とあります。


「別表に掲げられている事業」は、以下のように厚生労働行政関係の、福祉、医療、児童等幅広い分野を対象としています。
転用が認められる事業の一部を例として挙げます。

”別表に掲げられる事業”

医療法に規定する事業】担当部局:医政局
例:病院、診療所、医療安全支援センターなど


保健師助産師看護師法に規定する学校】担当部局:医政局
例:保健師養成所、助産師養成所、看護師養成所、准看護師養成所など


地域保健法に規定する事業】担当部局:健康・生活衛生局
例:保健所、市町村保健センターなど


感染症法に規定する事業】担当部局:健康・生活衛生局
例:特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関など


障害者雇用促進法に規定する事業】担当部局:職業安定局
例:障害者就業・生活支援センターなど


高年齢者雇用安定法に規定する事業】担当部局:職業安定局
例:シルバー人材センターなど


社会福祉法に規定する第一種社会福祉事業】担当部局:社会・援護局
例:授産施設、生計困難者への無利子資金融通事業など


社会福祉法に規定する第二種社会福祉事業】担当部局:社会・援護局
例:簡易住宅貸付事業、隣保事業など


身体障害者福祉法に規定する事業】担当部局:障害保健福祉部
例:身体障害者生活訓練事業、手話通訳事業など


老人福祉法・介護保険法に規定する事業】担当部局:老健局
例:老人福祉施設、介護保険施設など

これらの事業は「厚生労働省所管一般会計補助金等に係る財産処分」PDF 9〜11ページに詳細が記載されています。

「厚生労働省所管一般会計補助金等に係る財産処分について」にある記載

むらき

ちなみに、以下の画像は実際に記載してある内容です。

引用元:厚生労働省所管一般会計補助金等に係る財産処分

「こども家庭庁所管補助金等に係る財産処分について」にある記載

転用を検討する際は、転用先の事業がこの別表に該当するかどうかを確認しましょう。

別の管轄事業への転用について

社福経営者Aさん

村木さん、質問です!例えば【児童福祉法に規定する事業】→【老人福祉法に規定する事業】のように、別の管轄事業への転用は可能なのでしょうか?



むらき

「別表に掲げる事業」の中にあるものであればOKですが、転用の可否は以下のポイントを確認しましょう。

転用の可否を判断するポイント

POINT・転用先が「別表」に掲げられている事業であること
・所轄庁の事前承認を得ること
Tipsたとえば、
(前)高齢者福祉施設 →(後)こども関連事業
(前)老人福祉施設  →(後)障害者就業・生活支援センター

のように、転用前後の事業がこの別表内に含まれている場合、転用が認められる可能性が高いです。
(ただし、それぞれの事業の設備基準や消防法等には適合する必要があります)
むらき

転用するには、当該地域の区市町村の地域福祉計画などさまざまな計画との兼ね合いもあるため、法人だけの判断でできるわけではありません。必ず事前に事業実施地域の都道府県や区市町村など所轄庁に相談しながら進めていきましょう。

まとめ

今回は、財産処分のなかでも「転用」に焦点を当て、

POINT財産処分は、「転用」が認められると国庫納付(返納)が不要になる可能性がある
・国庫納付に関する条件を付さずに承認される(返納不要の)事業

を解説しました。

この記事を活用して、適切な手続きを進めていただければ幸いです!

 

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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