
この記事では、ある福祉施設の廃業後の実際のケースをもとに、廃業からから財産処分に向けた手続きと流れを解説します。
▼前回の記事はこちらをお読みください。
財産処分に際してどのような手続きが必要なのか、私の実際の体験から感じたポイントや注意点を記事にしてみようと思います。
財産処分の申請

今回の記事では、緑枠の部分を解説します。(※ここでは国庫補助金のことのみとなります)
財産処分の申請では、
市(へ提出)→県→国という順番で、申請書が渡っていきました。
福祉施設の種別(保育所か、老人ホームか等)にも、また市役所や県庁ごとに求められる書類や進め方に差があることもあるため、「まず所轄庁と相談(私どもで言えば「市」です)」が鉄則です。
担当者と細かく確認しておくことで、効率的に進めることができます。
提出した資料
申請の際、国へ提出する書類は、決して少なくありません。
実際に用意した主な資料は、以下のとおりです。
・財産処分承認申請書
・財産処分に該当する建物や設備等の財産目録
・解体する園舎の建築確認申請書と確認済証の写し
・児童福祉施設(保育所)の設置に係る認可書の写し及び管理運営規定
・解体に係る工事請負契約書の写し(処分要件や処分予定日を確認できる書類)
・写真(外観・内部の現状)
・評議員会の議事録
・理事会の議事録
・その他、自治体が指定する様式
▼提出資料や様式は以下のファイルをご参照ください。

提出資料は所轄自治体や種別事業によって違いがあります。所轄庁である市や県の担当者と事前にすり合わせておくことが重要です!
財産処分の承認…とにかく、時間がかかる!

ここが一番大変です。
下記の実際の通知にも、
書類審査から決済完了まで相当の期間(案件により3か月~半年)を要しますので、遅くとも処分予定日の3か月前までには、財産処分承認申請書を提出していただきますようお願いいたします。
という記載があります。


この問題に関しては、指定都市市長会・札幌市などからも「地方分権改革に関する提案事項」として改善提案書も提出されています。(下の画像は実際に提出されたものです)
こうした実情があることも、今後申請を検討している法人さんにはぜひ知っておいてほしいポイントです。


なぜ、ここまで期間がかかることをしつこいくらいに強調してきたかというと、そもそも承認が下りなければ、財産処分の「処分」に進めないためです。
建物の解体を計画していても、財産処分の「承認」が下りなければ実際の解体をすることはできないため、解体工事の段取りを決めることができなかったり、せっかく決めたのにそれが流れてしまうこともあったりします。
承認が遅くなればなるほど、そうした解体・廃棄等の「処分」そのものもどんどん遅くなっていきます。
仮に土地が賃借であったりしたら賃借料はかかりますし、また建物がそのままで年をまたいだりした場合には固定資産税などもかかってきます。
財産処分承認後の流れ
これまで書いてきたように、財産処分の承認がおりたら、ようやく次のステップへ進めます。
1.解体工事のスタート
承認が出ると、いよいよ施設の解体工事に取りかかることができます。
ここで注意したいのが、近隣への説明と配慮です。
解体時の騒音や車の出入りなど、住民の方への事前説明や工事期間の案内は忘れずに!
2.財産処分の完了報告
ここでも、写真や領収書、契約書などの書類をしっかりそろえておく必要があります。
ここでも所轄庁によっては、追加の資料を求めたりする場合がありますので、事前に所轄自治体の担当者さんとしっかりと確認しておくと安心です!◎

3.残存年数分の補助金返納(国庫返納)
そして最後の手続きが、補助金の返納(国庫納付)です。
建物や土地の取得時に補助金を受けていた場合、「残存年数分に応じて」補助金の一部を国に返す必要があります。
この計算式は、自治体や補助金の種類によって異なるため、市や県の担当者と必ずすり合わせしておきましょう。
私が実際に経験して感じたこと

ここまで、実際に一連の流れを体験して私が感じたのは、
②解体費と財産処分の返納が重くのしかかる
ということです。
詳しくいえば、
⚫︎いつ承認されるのか検討がつかないため、解体業者との契約や手配をどのようにまとめたらいいか。
⚫︎一番肝心な解体費用や財産処分の返納分を捻出・確保できなければどうなっていたのか。
など、借入がなかったとしても、解体費や補助金返納なども視野にいれた今後の法人経営の継続性をどう担保していくのかを、事業がしっかり運営しているうちに考えていく必要があるように思います。

こうした私の経験が、これから財産処分をお考えの方の参考になれば幸いです!
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