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当サイトでは、“今後の社会福祉法人や社会福祉事業の事業継続・建て替えなどにあたって、財産処分のことを取り上げ、このことをしっかり念頭におかなければならない”ということを言ってきました。

いよいよ、財産処分関連の最新動向のお話です!
▼財産処分に関する記事一覧
▼関連記事:廃業後の流れ
◾️ある福祉施設の廃業後の流れ①
◾️ある福祉施設の廃業後の流れ②
また、以下の記事▼でも解説したように、「2040~検討会の取りまとめ」に、財産処分に関する論点が盛り込まれたということもお伝えしました。
そして今回、「2040年のサービス提供体制等のあり方」に関する検討会の取りまとめ案を受けた形で、
『人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築』
が出されました。
今回はこの資料の中から、
論点⑥:地域の実情に応じた既存施設の有効活用
地域の実情に応じた既存施設の有効活用(論点⑥)

中山間地域や人口減少地域の福祉施設では、
・利用者が減っている
・しかし建物はまだ使える状態
など社会資源でもある福祉施設が有効に活用されていないという現実に直面しています。
施設を別用途で使いたくても、”財産処分”がネック
施設を建てるときに国の補助を受けていると、
一定期間(主に10年)以内に用途を変えたい場合、財産処分を行わなくてならない、さらに「国庫納付」=補助金の返還が必要なことがあります。
現行制度の財産処分における“国庫納付”をおさらい
①特養をそのまま継続して、その一部を転用する場合
→国庫納付は不要
②他の福祉施設(高齢・障害・児童)に転用する場合
⚪︎一部だけ使う(例:建物の半分だけ転用)
→ 国庫納付は不要
⚪︎全部を転用する場合でも
→ 一定の条件を満たせば返納不要

10年ルール
建物の経過年数も、返納が必要かどうかに大きく関わってきます。
- 建物が 10年以上経過していれば、国庫納付をせずに財産処分後に転用できる
=「柔軟に事業転換などができる」 - 10年未満の建物は、国庫納付を伴う財産処分をしなければならない
=「(地域の実情に応じて)柔軟に事業転換などができない」
今回の介護保険部会で提案されている運用案

資料の中では、以下のような仕組みが提案されています。
原則として介護事業であれば、「他の介護事業への転用」が基本であるが・・・
まず、補助金を使って建てられた介護施設であれば、“他の介護事業として使う”ことが前提になります。
原則は他の介護事業への転用ですが、以下のような案が提案されています。
①10年未満であっても、当初の介護事業を継続することで、介護保険事業計画に支障が出るなら、障害・児童施設もOKに?
たとえば、建物の使用年数が10年未満であっても「今のまま使っても、地域の介護保険事業計画の達成が難しい」という場合、高齢者施設への全部転用・障害者施設や児童施設への転用も一部認めようというものです。
○ その際、補助金の交付の目的に鑑み、高齢者施設への転用を基本とすることが適当という前提で、
❶ 例えば、経過年数10年未満の施設で、当初の事業を継続することが介護保険事業計画等の達成に支障を生じるおそれがある場合は、高齢者施設への全部転用(一部を障害・児童施設に転用する場合を含む。)を認めることが考えられるのではないか。
(出典:厚労省社会保障審議会介護保険部会2025年9月8日資料『人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築』p.12)
・10年未満での他の社会福祉事業等への転用を認めることを検討
②やむを得ず福祉施設を廃止する場合
さらに、高齢者人口や出生数の急減などで、どうしてもその福祉事業が続けられない場合も考えられます。
その場合は自治体・地域の事業者・住民としっかり合意形成し、市町村の介護保険事業計画に位置付けた上で、
たとえば医療施設や保健施設など、
厚労省が所管している福祉以外の施設への転用や取壊し等を検討することも記載されています。
❷ さらに、高齢者人口の急減等、真にやむを得ない場合において、他の施設との統合等のため高齢者事業を廃止する場合は、自治体、地域の事業者・関係者・住民との合意形成を図った上で介護保険事業計画等へ位置づけることを条件に、福祉施設以外の厚生労働省所管施設等への転用等を認めることが考えられるのではないか。
この場合、厚労省所管施設以外の施設への転用や取壊し等については、国庫補助がなされていることを踏まえた検討が必要ではないか。
(出典:厚労省社会保障審議会介護保険部会2025年9月8日資料『人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築』p.12)
このように補助事業で建てられた福祉施設等の廃止・取壊しについても、一定の条件下のもとで国庫納付を不要とすべきではないか、という検討がなされています。
まとめ
人口減少や出生数減少など、これまで同様の福祉サービスを効率的に、かつ効果的に提供し続けるためには、既存の施設の有効活用や、統合・廃止を伴う再編が必要になるかもしれません。
そのなかで、財産処分に関して、補助事業で建てられた福祉施設においても、一定の条件下という制約はありますが、事業の統合・廃止についても、国庫納付を不要とすべきではないか、という検討に入ったことは、中山間・人口減少地域の福祉サービスを維持するために、これまでの制度やルールでは対応できないことを、国も理解し、対応していこうと考えているのだと思います。
財産処分の問題は、以前からこちらのサイトでも指摘してきたことですが、いよいよ国も本格的な検討をはじめたというところで、これからも引き続き注視していきましょう。
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