社会福祉法人の合併にまつわるリアルな声|調査データから読み解く現場の課題①

社福経営者Aさん

最近、社会福祉法人の合併が検討されている、増えつつあるって聞きますが、実際のところはどうなんでしょうか?



むらき

実は国のアンケート調査データが出ています。令和2年のデータで少し古いものになりますが、とても興味深い内容なんですよ。今日は合併に関する実態と課題を、グラフやデータから読み解いていきましょう!

この記事では、厚生労働省の報告書「社会福祉法人の事業拡大に関する調査研究事業」(令和2年度)をもとに、実際に合併を経験した法人の声を集めてご紹介します。

合併を経験した法人の概要

現在の主流は「吸収合併」

POINT調査対象の社会福祉法人のうち、合併を実施した法人では88.2%が「吸収合併」を選んでおり、「新設合併」は0%でした。
「社会福祉法人の事業拡大に関する調査研究事業」(令和2年度)
社福経営者Aさん

どうしてほとんどが吸収合併なのでしょうか?

むらき

“吸収合併”が圧倒的に多いのは、吸収する側法人への移行のしやすさ、合併される側法人の事情や今後の事業戦略というのも関係してくると思います。そのあたりの経緯や理由について、下記の記事にて解説します。

合併の経緯と理由

「社会福祉法人の事業拡大に関する調査研究事業」(令和2年度)

このアンケートによると、複数回答の上位は以下の通りです。

⚫︎事業の多角化のため:47.1%

⚫︎事業規模の拡大のため:35.3%

⚫︎将来の投資(再投資)に備えるため:29.4%

POINTこれを見ると、単に“赤字だから吸収される”というような話ではなくて、将来の投資や拡大を見据えた戦略的な合併が多いことがわかりますね!

合併相手の事業分野:高齢分野が多め

「社会福祉法人の事業拡大に関する調査研究事業」(令和2年度)

次は「合併相手の事業分野」です。どんな相手と合併しているのか、ということですね。

⚫︎高齢:47.1%

⚫︎障害:35.3%

⚫︎児童:23.5%

⚫︎その他:11.8%

高齢・障がい・児童と、種別をまたいだ合併も珍しくないようです。

合併相手をどう見つけた?

「社会福祉法人の事業拡大に関する調査研究事業」(令和2年度)
社福経営者Aさん

みなさん、どうやって合併相手を見つけているんでしょうか?

アンケートによると、以下の手段が同率で上位(各23.5%)でした。

⚫︎相手方から直接連絡があった

⚫︎役職員を通じての打診

⚫︎自治体からの紹介

社福経営者Aさん

自治体も関わってくるんですね!

むらき

そうですね!地域全体での福祉機能の調整役として、紹介を担う場面も増えてきているということかもしれません。

合併で大変だったことは?

課題のトップは「法人の規程や制度の統合」

「社会福祉法人の事業拡大に関する調査研究事業」(令和2年度)
POINT

アンケートによると、一番の課題は「法人の規程や制度の統合・調整」
次いで全体の進め方やスケジュールの立て方が挙がりました。

その解決方法として、自由記述には、

Tips

⚫︎「県福祉監査課に援助、指導してもらった」

⚫︎「弁護士や司法書士にも相談した」

⚫︎「複数回にわたり調整会議を行った」

など、「行政への相談」と「丁寧な法人間の調整」が重要であったと記載がありました。

合併後に見えてきた新たな課題

キーワードは「文化の違い」

POINT合併後の課題として多く挙げられたのが、事業運営にかかる考え方や行動様式の違い、つまり“法人文化”の違いです。

【アンケートの自由回答によると…】

⚫︎「年数が経つごとに“一体感”を求める中で、文化の違いが壁になる」

⚫︎「同職種間で賃金の違いがあったため、配慮が必要だった」

むらき

制度よりも“人”の部分、つまり働き方やそれまでの文化の違いがボディブローのように効いてくるようですね。逆にいえば、こうした職場環境の違いや働き方が違いをしっかり乗り越えていくことが成功する合併の鍵になるといえるかもしれません。

合併を成功に導いた工夫とは?

社福経営者Aさん

このアンケートを見ていると、合併ってやはり大変なことばかりなのでしょうか?

むらき

確かに困難はあるようですね、でも、ちゃんとうまくいった事例もたくさんあるんですよ!

【アンケートの自由回答によると…】

⚫︎「もともとグループ内で交流があった」

⚫︎「しばらくはそれぞれの文化を尊重した」

⚫︎「職員に対して丁寧な説明を行った」

このように丁寧に進めていくことで、うまくいった事例もあります。

“人と人の信頼関係”や“日頃からの関係性づくり”が大事なんだなぁと、あらためて感じますね。

合併の「手引き」について

認知度は半々

合併の参考資料である「手引き」についての認知度は、

⚫︎「手引きを知っていた」:41.2%

⚫︎「知らなかった」:47.1%

⚫︎知っていた人の100%が何らかの形で活用したと回答

知っていた人は「全部活用した!」

「手引きを知っていた」7名は、全員が「活用できた」と回答しています。

修正点などの意見は特に見られませんでした。

知られていないのは課題ですが、使った人には好評だということがわかりますね。

もっと周知されると、初めての合併も進めやすくなるはずです!

今後に向けた声と課題

その他の意見、今後の事業展開等に向けて必要な施策や取組み等については、下記があげられていました。

⚫︎「県を越えた合併では、行政の理解が不十分なことも」

⚫︎「賃金格差への取り組みが必要」

⚫︎「人事交流や合同イベントで法人間の連携を深めたい」

社福経営者Aさん

これからの合併は、もっと“地域ぐるみ”になっていく、ということなんですかね?

むらき

そうですね。法人同士の合意だけじゃなく、地域や職員、行政との協調がますます重要になっていくかと思います!

まとめ

今回は、社会福祉法人の合併についてのリアルな声や今後の課題をアンケートから読み取りました。

POINTこの調査から見えてきたのは、合併には期待と不安の両面があるという現実。
しかし、丁寧な準備と信頼関係があれば、多くの法人が“乗り越えられた”と実感している、ということです。

実際の現場の声をもとに、これから合併を検討する法人が後悔のない選択をできるよう、今後も制度整備と情報共有が求められますね。

 

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村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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