
これまで、社会福祉法人における「合併」や「事業譲渡・譲受」を実際に経験した法人の声をご紹介してきました。
この記事では続きとして、厚生労働省の報告書「社会福祉法人の事業拡大に関する調査研究事業」(令和2年度)をもとに、「まだ合併や事業譲渡を実施していない法人」の実態や考えをご紹介します。
「うちはまだ経験ないけど…」という法人の方にこそ、知っていただきたいリアルな声が詰まっています。
将来の備えとして、ぜひ参考にしてみてください。
合併・事業譲渡等についての意向

社会福祉法人に「合併や事業譲渡って必要ですか?」とたずねたところ、
「必要性を感じていない」が55.5%と過半数でした。
一方で「今後は必要になるかもしれない」と感じている法人も38.1%と、一定数存在しています。

まだ行動には移していないけど、「いつかは」と考えている法人も多いようですね。
合併や事業譲渡等の必要性を感じていない理由
では、なぜ「必要ない」と感じるのでしょうか?

⚫︎「地域の福祉ニーズに十分に応えているから」(34.1%)。
⚫︎次いで「現状維持が法人の方針であるため」(27.4%)。

「今のままでうまくいってる」という手応えがある法人にとっては、変化はリスクに映るのかもしれませんね。
合併や事業譲渡等の必要性を感じている理由

一方、「必要性を感じている」と答えた法人の理由は…
⚫︎人材確保・育成のため(57.3%)
⚫︎財務の安定(42.7%)
⚫︎事業の多角化(33.3%)など
自由記述では以下のような声もありました。
⚫︎「少子化が進む中で、ニーズに応えるには規模拡大が必要」
⚫︎「総務や経理の効率化が課題」
⚫︎「選ばれる事業所になりたい」
課題が明確な法人ほど、変化への備えとして「連携」や「合併」に目が向いているようです。
合併や事業譲渡等の検討において感じた困難や課題
「検討はしたけど実現できなかった」法人も少数ながら存在しました。
その理由としては、
⚫︎法人文化の違い
⚫︎規程や制度の統合・調整の難しさ(各83.3%)
がありました。

やはり「制度の統合」と「文化の違い」が最大の壁となるようです。これは丁寧な対話と準備で乗り越えるしかありませんね。
実現に至らなかった決定的な要因
自由記述では以下のような声がありました👇
⚫︎「先方の法人と考え方が合わなかった」
⚫︎「文化の違いがネックに」
⚫︎「国庫補助金の清算がハードルに」
⚫︎「他の法人に譲渡先を選ばれてしまった」

思い描く未来が一致しているか?事前の“対話とビジョンの共有”が大事ですね!
手引きの認知度と活用状況

社会福祉法人向けの「合併・事業譲渡・法人間連携の手引き」については…
⚫︎知っていた:11.9%
⚫︎知らなかった:74.4%
知っていた人の中でも、活用できたのは約4割にとどまりました。
まとめ
今回は、「まだ合併や事業譲渡をしていない法人」の声をアンケートから抜粋しご紹介しました。
ポイントを振り返ると…
⚫︎現状に満足していて必要性を感じない法人が多数
⚫︎一方で人材確保や経営の安定のために必要性を感じている声もあり
⚫︎実現の壁は「文化の違い」や「制度の調整」
⚫︎国の手引きはあまり活用されていない
今はまだ静観している法人も、数年後には連携を考える時が来るかもしれませんね。
手引きやさまざまな事例を知っておくことが、その時の備えになります。
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【社会福祉法人愛生会 理事長】趣味は神社仏閣巡りです。大宮の氷川神社と成田山新勝寺はずっと通い続けています。これからの社会福祉法人経営の悩み、問題、課題を一緒に考えていきましょう。

再び「スラムダンク」にはまっています。「最後まであきらめない」気持ちが仕事に向き合う姿勢と共感するからでしょうか。休日には「乗り鉄」の子供と一緒に関東近郊に「電車の旅」に出ています。車窓を見ながら本を読む時間が楽しみです。

大手会計事務所でM&A、組織再編など幅広い案件に携わってきました。地元秋田に戻ってからは、社会福祉法人監査など社会福祉事業に関する業務も手掛けております。皆様の課題解決の一助となれれば幸いです。週末は、小学生の息子と日帰り温泉巡りをしています。
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