第1種・第2種社会福祉事業の違いとは?|社会福祉法人の事業譲渡の全体的なポイント及び留意事項 その②

▼前回の記事では、社会福祉法人の事業譲渡の基本的な仕組みや、譲受法人での継続可能性の事前確認、所轄庁との協議の重要性について解説しました。


今回はその続きとして、

この記事の内容・第1種・第2種社会福祉事業の違い
・法人外流出の防止と支払い対価
・事業譲渡において大切なポイント

など、事業譲渡における重要ポイントを詳しく解説します!

引用および参照元厚労省「合併・事業譲渡等マニュアル」より

第1種社会福祉事業と第2種のちがい

社福経営者Aさん

社会福祉法人の事業譲渡を考えているんですが、そもそも社会福祉事業には種類がありますよね。譲渡の際に何か違いはあるんですか?



むらき

いい質問ですね!社会福祉事業には、大きく分けて『第1種社会福祉事業』『第2種社会福祉事業』 の2つがあるんです。

第1種と第2種の違い

区分具体例経営主体
第1種社会福祉事業・特別養護老人ホーム
・障害者支援施設
・児童養護施設 など
社会福祉法人または行政
(民間企業は不可)
第2種社会福祉事業・訪問介護デイサービス
・保育所
・放課後児童クラブ など
社会福祉法人、NPO法人、株式会社など民間事業者も経営可能
社福経営者Aさん

なるほど!第1種は、社会福祉法人か行政でしか運営できないんですね。



むらき

そのとおりです。だから第1種の事業を譲渡する場合は、譲り受ける法人が社会福祉法人であることが大前提となります。

POINT社会福祉事業には第1種社会福祉事業と第2種社会福祉事業があり、このうち第1種のほうは、原則行政と社会福祉法人にしか経営できない。

法人外流出の防止と支払い対価の関係について

社福経営者Aさん

事業譲渡をする場合、財産の取り扱いってどうなるんですか?



むらき

事業譲渡では、法人の財産が適正に扱われることがとても重要です。特に、法人の財産が外部に流出しないように注意する必要があります


  POINT法人外流出とは、社会福祉事業に使われるべき財産が、特定の個人や企業に不当に渡ってしまうことです。

法人外流出を防ぐポイント

POINT社会福祉法人の財産は、もともと税制優遇や補助金を受けて蓄積されたものです。
そのため、事業譲渡の際には、
適正な価格で売却されることが求められます。

合併マニュアルのP136に記載されている「対価の支払い」に関するルールを簡単にまとめると、以下のようになります。

支払い対価の基本ルール

POINT
社福経営者Aさん

要するに、適正な価格で取引しないとダメってことですね?



むらき

そのとおりです。不動産については、適正な価格での取引であることを証明するために、不動産鑑定や公認会計士の評価を活用することも重要です。ただし、譲渡法人においてはできるだけ高く、譲受法人においてはできるだけ安く取引したいというのがありますので、その点でもしっかり話し合うことが大切ですね。

事業譲渡で最も大切なのは、利用者のサービス継続!

むらき

事業譲渡において何よりも大切なのは、「利用者へのサービス提供が継続されること」です。



社福経営者Aさん

それって、どういうことですか?

POINT事業譲渡において最も重要なのは、利用者へのサービス提供が滞りなく継続されることです。

事業譲渡のプロセスにおいて、利用者の不安を最小限に抑えるためにも、事業の円滑な引き継ぎが求められます。

サービス継続のために必要なこと

1.利用者や家族への十分な説明

突然「運営法人が変わる」と言われたら、利用者や家族は不安になりますよね。

POINT事業譲渡の際は、利用者やその家族に十分な説明を行いましょう

譲渡後に利用者が不利益を被ることのないよう、事前の調整や情報共有をしっかり行います。

2.職員の雇用継続と労働条件の整備

POINT人材が流出すると、サービスの質が低下する可能性があるため、譲渡後の待遇や雇用継続を慎重に調整する必要があります。

職員がそのまま働ける環境を確保することが大事です。

3.行政との調整

POINT所轄庁(市町村や都道府県)と事前に相談し、事業譲渡の手続きを円滑に進めましょう。

許認可の移行や、手続きには何が必要か、しっかりと確認しましょう。

4.DDの重要性

POINT譲受法人が事業を適切に継続できるかを、さまざまな観点から事前に調査・分析することが必要です

譲受法人の経営基盤や運営体制、職員の確保状況、財務状況などをしっかりと把握し、事業の継続性に問題がないか確認しましょう

この調査・分析を行う過程は「デューデリジェンス(DD)」と呼ばれ、譲渡後のトラブルを防ぐための重要なステップとなります。
社福経営者Aさん

つまり、利用者や職員が安心して引き継げるようにすることが大事なんですね!



むらき

そのとおりです!社会福祉法人の事業は、単なるビジネスではなく、地域の福祉を支える使命があるので、しっかり準備をすることが求められます。このデゥーデリジェンスについては、いずれ別な記事にて解説したいと思っています。

 まとめ

今回の記事では、社会福祉法人の事業譲渡における基本的なポイントを解説しました。

・法人外流出を防ぐためのルール
・利用者のサービス継続が最重要

というポイントを押さえて、スムーズに手続きを進めましょう。

次回は、事業譲渡の具体的な手続きや進め方について詳しく解説していきます!

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。