
▼前回の記事では、社会福祉法人の事業譲渡の基本的な仕組みや、譲受法人での継続可能性の事前確認、所轄庁との協議の重要性について解説しました。
今回はその続きとして、
・法人外流出の防止と支払い対価
・事業譲渡において大切なポイント
など、事業譲渡における重要ポイントを詳しく解説します!
第1種社会福祉事業と第2種のちがい

社会福祉法人の事業譲渡を考えているんですが、そもそも社会福祉事業には種類がありますよね。譲渡の際に何か違いはあるんですか?

いい質問ですね!社会福祉事業には、大きく分けて『第1種社会福祉事業』 と 『第2種社会福祉事業』 の2つがあるんです。
第1種と第2種の違い
区分 | 具体例 | 経営主体 |
---|---|---|
第1種社会福祉事業 | ・特別養護老人ホーム ・障害者支援施設 ・児童養護施設 など | 社会福祉法人または行政 (民間企業は不可) |
第2種社会福祉事業 | ・訪問介護デイサービス ・保育所 ・放課後児童クラブ など | 社会福祉法人、NPO法人、株式会社など民間事業者も経営可能 |

なるほど!第1種は、社会福祉法人か行政でしか運営できないんですね。

そのとおりです。だから第1種の事業を譲渡する場合は、譲り受ける法人が社会福祉法人であることが大前提となります。
法人外流出の防止と支払い対価の関係について


事業譲渡をする場合、財産の取り扱いってどうなるんですか?

事業譲渡では、法人の財産が適正に扱われることがとても重要です。特に、法人の財産が外部に流出しないように注意する必要があります。
法人外流出を防ぐポイント
そのため、事業譲渡の際には、適正な価格で売却されることが求められます。
合併マニュアルのP136に記載されている「対価の支払い」に関するルールを簡単にまとめると、以下のようになります。
支払い対価の基本ルール
- 適正な対価を設定する
・事業譲渡の際、譲受法人が支払う対価は、公正な評価に基づく必要がある。
・過大・過小な価格設定はNG! - 法人財産の適正な活用
・譲渡後も、財産が適切に社会福祉事業に活用されることが前提。
・不当に安く売却して、譲受法人や特定の個人が利益を得ることは許されない。 - 特別な利益供与の禁止
・特定の関係者への不当な利益供与は禁止!
・例えば、元の法人の理事が個人的に利益を得るような形の譲渡は認められない。
▼「法人外流出」と「特別な利益供与の禁止」については以下の記事で詳しく解説しています。

要するに、適正な価格で取引しないとダメってことですね?

そのとおりです。不動産については、適正な価格での取引であることを証明するために、不動産鑑定や公認会計士の評価を活用することも重要です。ただし、譲渡法人においてはできるだけ高く、譲受法人においてはできるだけ安く取引したいというのがありますので、その点でもしっかり話し合うことが大切ですね。
事業譲渡で最も大切なのは、利用者のサービス継続!


事業譲渡において何よりも大切なのは、「利用者へのサービス提供が継続されること」です。

それって、どういうことですか?
事業譲渡のプロセスにおいて、利用者の不安を最小限に抑えるためにも、事業の円滑な引き継ぎが求められます。
サービス継続のために必要なこと
1.利用者や家族への十分な説明
突然「運営法人が変わる」と言われたら、利用者や家族は不安になりますよね。
譲渡後に利用者が不利益を被ることのないよう、事前の調整や情報共有をしっかり行います。
2.職員の雇用継続と労働条件の整備
職員がそのまま働ける環境を確保することが大事です。
3.行政との調整
許認可の移行や、手続きには何が必要か、しっかりと確認しましょう。
4.DDの重要性
譲受法人の経営基盤や運営体制、職員の確保状況、財務状況などをしっかりと把握し、事業の継続性に問題がないか確認しましょう。

つまり、利用者や職員が安心して引き継げるようにすることが大事なんですね!

そのとおりです!社会福祉法人の事業は、単なるビジネスではなく、地域の福祉を支える使命があるので、しっかり準備をすることが求められます。このデゥーデリジェンスについては、いずれ別な記事にて解説したいと思っています。
まとめ

今回の記事では、社会福祉法人の事業譲渡における基本的なポイントを解説しました。
・利用者のサービス継続が最重要
というポイントを押さえて、スムーズに手続きを進めましょう。
次回は、事業譲渡の具体的な手続きや進め方について詳しく解説していきます!

【社会福祉法人愛生会 理事長】趣味は神社仏閣巡りです。大宮の氷川神社と成田山新勝寺はずっと通い続けています。これからの社会福祉法人経営の悩み、問題、課題を一緒に考えていきましょう。

再び「スラムダンク」にはまっています。「最後まであきらめない」気持ちが仕事に向き合う姿勢と共感するからでしょうか。休日には「乗り鉄」の子供と一緒に関東近郊に「電車の旅」に出ています。車窓を見ながら本を読む時間が楽しみです。

大手会計事務所でM&A、組織再編など幅広い案件に携わってきました。地元秋田に戻ってからは、社会福祉法人監査など社会福祉事業に関する業務も手掛けております。皆様の課題解決の一助となれれば幸いです。週末は、小学生の息子と日帰り温泉巡りをしています。
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