『人事・労務関連』|社会福祉法人の事業譲渡のための手続き その⑪

本記事では、厚労省「合併・事業譲渡等マニュアル」(180〜183ページ)をもとに、
事業譲渡に伴う人事・労務関連の手続きについて解説します。

▼前回までの記事は以下をお読みください。

実施要項

POINT「事業譲渡に伴う人事・労務関連の手続き」を適切におこなうことで、職員の雇用を安定させ、事業の継続性を確保することができます。
むらき

雇用条件の調整や転籍手続きがスムーズに進むことで、職員の不安を軽減し、新しい環境での円滑な業務運営につながります。

事業譲渡に伴う人事・労務関連の手続きは、次のような流れで進められます。

 (1) 職員の引継ぎ(譲渡側・譲受側)

社福経営者Aさん

職員の転籍って、譲渡側だけで決められるんですか?



むらき

いいえ!譲受法人ともしっかり話し合い、雇用条件を調整することが必要です。

事業譲渡においては、職員の雇用継続が非常に重要な要素となります。
まずは、
どの職員が譲受法人へ転籍するのかを明確にし、引継ぎをスムーズに進めることが求められます

職員の転籍におけるポイント・ 転籍対象の職員を明確にする
・ 職員の役職や業務内容を整理する
・ 譲渡法人と譲受法人で職員情報を正確に共有する

(2) 雇用条件の検討(譲受側)

職員の転籍が決まったら、次に譲受法人で雇用条件について協議を行います

協議のポイント・給与規定や就業規則の改定が必要か確認する
・職員の労働条件(給与、勤務時間、福利厚生など)をすり合わせる
・転籍する職員の役割やポジションを明確にする
POINT譲受法人へ転籍する対象職員の雇用条件によっては、譲受法人側での給与規定や就業規則を改定する必要もあるため、事前の協議が重要となります。

 (3) 職員説明会の実施(譲渡側)

雇用条件が決まったら、転籍対象の職員に説明を行い、同意を得ます。

説明のポイント・転籍後の雇用条件(給与・勤務時間・福利厚生など)を明確に伝える
・職員が納得できるよう、個別面談を実施する
・転籍を希望しない職員の対応も検討する
POINT職員の不安を軽減するためにも、事業譲渡の目的や転籍のメリットをしっかり説明することが重要です。

 (4) 雇用契約の締結(譲受側)

職員の同意を得たら、譲受法人と転籍対象の職員の間で新たな雇用契約を結びます

雇用契約のポイント・契約書の内容を確認し、労働条件を明確にする
・転籍日を決め、スムーズな移行を実現する
・必要な社会保険・税務手続きを行う
むらき

雇用契約の締結が完了すれば、正式に譲受法人の職員として勤務を開始することになります!

事業譲渡等指針

事業譲渡又は合併を行うに当たり、会社等が留意すべき事項に関する指針(平成28年厚生労働省告示第318号)がまとめられておりますので、参照ください。


まとめ

今回は、事業譲渡に伴う人事・労務関連の手続きについて解説しました。ポイントを整理すると…

POINT・まず譲渡法人内で職員の引継ぎを決定する
・譲受法人と雇用条件について協議し、給与規定や就業規則の改定を検討する
・職員に対して転籍後の条件を説明し、同意を取得する
・雇用契約を締結し、社会保険・税務手続きを完了する

 

職員の雇用は、事業譲渡において最も大切な要素のひとつです。円滑に進めるためにも、譲渡法人・譲受法人・職員それぞれが納得できる形で手続きを進めることが重要です。

当サイトでは、社会福祉法人の合併や事業譲渡についてのアドバイスをしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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