『債権者保護手続き』~社会福祉法人の新設合併のための手続き その3〜

本記事では、厚労省「合併・事業譲渡等マニュアル」に基づき、

この記事の内容社会福祉法人の新設合併における「債権者保護手続き」のポイント

を詳しく解説します。

新設合併における債権者保護手続き

POINT新設合併の場合も、消滅する法人ごとに債権者保護手続きが必要です。
「債権者保護手続き」とは「債権者保護手続き」は、新設合併によって法人が消滅することに伴い、債権者の権利を守るために実施されます。

▼基本的な流れは吸収合併の場合と同様ですので、以下の記事も参考にしてください。

債権者保護手続きの流れ

新設合併消滅社会福祉法人における手続きは、以下のような流れで進めます。

POINT1.貸借対照表の要旨の作成

2.公告の実施

3.個別勧告の実施

4.債権者からの異議への対応

以下でひとつずつ解説します。

1.貸借対照表の要旨の作成

POINT新設合併に関わる法人の財務状況を明確にするため、貸借対照表の要旨を作成します。

これは債権者に対して、法人の財務健全性を説明し、合併後の財政基盤への信頼を得るための重要な資料となります。

2. 公告の実施

新設合併を行うことを、官報や新聞などで公告します。
公告には、以下の内容を含める必要があります。

公告のポイント・合併によって法人が消滅する旨
・債権者が異議を申し立てる場合の期限(通常2ヶ月以上)

3. 個別催告の実施

次は債権者に対して、個別に催告書を送付します。

これは、公告だけでは連絡が行き届かない可能性があるためです。

個別に通知をすることで、確実に異議を申し立てる機会を提供することできます。

4. 債権者からの異議対応

異議を申し立てた債権者がいる場合は、以下のいずれかを行いましょう。

異議対応・弁済(借入金の返済など)
・担保の提供
・財産の信託

定めた期間内に債権者が異議を述べなかった場合は、債権者は合併を承認したものとみなされます。

異議がない場合は、そのまま次の手続きに進みます。

注意点

新設合併の債権者保護手続きは、吸収合併の場合と大きな違いはありません。

POINTただし、新設合併では複数の消滅法人が関与するため、それぞれの法人で同様の手続きを行う必要がある点に注意してください。

手続きが複雑になる可能性があるため、事前にスケジュールを立てて進めることが重要です。

債権者保護手続きのポイント

債権者保護手続きにあたってのポイントは、以下のとおりです。

POINT

◾️早めの相談と準備が鍵
手続きには時間がかかる場合があるため、事前に債権者や関係者との相談を始めましょう。

◾️公告や催告の確実な実施
債権者保護手続きが不十分な場合、合併自体が無効となるリスクがあります。
公告や催告を確実に行い、記録をしっかり残すことが大切です。

◾️専門家の活用
手続きの複雑さを軽減するため、弁護士や行政書士に相談することを検討してください。

福祉医療機構から借入を行っている場合

福祉医療機構(WAM)から借入を行っている場合、合併に伴い多くの提出書類が求められます。

これらの書類は準備に時間がかかるため、早い段階で福祉医療機構に相談し、必要な書類や手続きを確認しておくことが重要です。

▼提出書類の一覧は以下の記事をご参照ください。

 

まとめ

新設合併では、消滅法人ごとに債権者保護手続きを行う必要があります

公告や個別催告など、手続きの基本的な流れは吸収合併と同様ですが、複数の法人が関与する場合、手続きが複雑になる点に注意が必要です。

専門家のサポートを上手く活用しながら、計画的に進めていきましょう。

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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