『会計・税務処理』~社会福祉法人の新設合併のための手続き その6〜

本記事では、厚労省「合併・事業譲渡等マニュアル」に基づき、

この記事の内容社会福祉法人の新設合併における「会計・税務処理」のポイント

を詳しく解説します。


▼会計・税務処理の前ステップである「事後開示」については以下の記事をご覧ください。

新設合併の会計・税務処理

新設合併の「会計・税務処理」は、基本的に吸収合併と同じプロセスを踏みます。

実施事項①合併の会計処理

②社会福祉充実計画及び社会福祉充実残額の確認
既存の社会福祉充実計画がある場合、合併による環境の変化に応じて計画の変更が必要かを確認します。変更が必要な場合は、所轄庁への承認や届出が求められます。

③税務処理
合併後の税務処理は、承継する権利義務によって異なるため、税務署などに確認しながら進める必要があります。また、合併による事業規模の拡大に伴い、新たに消費税の課税義務が発生する可能性にも注意が必要です。
Tips新設合併は経済的には「統合」として扱われ、合併対価が支払われることはありません。

▼以下の記事もご参照ください。
吸収合併における会計・税務処理

資産・負債の評価

消滅法人の決算

新設合併で消滅する法人は、以下の手続きを行う必要があります。

消滅法人が行う手続き

◾️資産および負債の評価
消滅法人のすべての資産と負債について、結合時の適正な帳簿価額を確定させます。

◾️通常の決算手続き
合併時の決算は、通常の年次決算と同じ形式で実施されます。これにより、正確な財務情報を新設法人に引き継ぐ準備が整います。

新設法人への承継

POINT消滅法人で確定された資産および負債は、新設法人にすべて引き継がれます。

この承継は、法律上も会計上も新設法人の新たなスタートを支える重要なプロセスとなります。

消滅法人の事前チェック

POINT新設合併では、新設法人が消滅法人の権利義務をすべて承継します。

そのため、消滅法人ごとに以下の点を事前にチェックすることが重要です。

会計上の誤謬確認

POINT消滅法人の財務状況に誤りや不備がないかを確認し、適切な修正を行います。

不正確な情報が承継されると、新設法人の運営に影響を及ぼす可能性があるため、慎重な確認が求められます。

むらき

法人によっては、未収金で計上している金額を精査してみると、数年前の未納金(回収はほぼ不可能)がそのまま計上されているなどもあります。そうした経年でそのままになっているお金もありますので、それらを公認会計士等にしっかりとチェックしてもらう必要があります。

公認会計士による事前調査(DD)

新設合併の実施前に、公認会計士によるデューデリジェンス(DD)を実施しましょう。

これにより、財務状況の透明性が確保され、将来のトラブルを防ぐことができます。

むらき

ここにも書いているとおり、新設法人は消滅法人の負債なども含めた一切の権利義務を承継することになります。そのため、公認会計士による財務諸表のデューデリジェンスのほか、法務上や労務上でもデューデリジェンスを行い、トラブルや係争等何らかのリスクを抱えていないかをチェックする必要があります。そのため弁護士や社会保険労務士などの専門家へ委託していくことも検討していきましょう。

まとめ

今回は、新設合併の会計・税務処理について解説しました。

新設合併では、消滅法人の資産・負債を適切に評価し、新設法人へ確実に承継することが求められます。

また、事前に会計上の誤謬を確認し、公認会計士の協力を得ることで、透明性を保ちながら合併を進めることができます。

吸収合併と共通する部分が多いものの、新設合併特有のポイントを押さえながら、スムーズな手続きを目指しましょう。

▼吸収合併の場合の記事も参考にしてください。

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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