『事後開示』~社会福祉法人の吸収合併のための手続き その9〜

このカテゴリでは、厚労省「合併・事業譲渡等マニュアル」に基づき、社会福祉法人の吸収合併における「事後開示」について詳しく解説します。

この記事の内容・事後開示の目的
・事後開示の対象となる項目
・事後開示におけるポイントと注意点

▼今回解説する「事後開示」の前段階である「合併の登記手続き」については、以下の記事をごらんください。

事後開示とは

吸収合併を行った存続法人は、合併後に一定の情報を公開する「事後開示」の義務があります。

この事後開示の目的は、

POINT合併に伴い承継した権利義務や重要事項を透明性のある形で管理し、関係者が必要な情報を確認できるようにすることです。

具体的には、承継した重要な権利義務や合併契約書などの書類を主たる事務所に備え置き、閲覧請求に応じられる状態にすることが求められます。

また、紙媒体だけでなく電子データでの保管も認められており、効率的に情報を管理することが可能です。

事後開示の方法

事後開示の方法は、以下の2つです。

備置き

POINT存続法人は、合併登記の日から6ヶ月間、事後開示に必要な情報を主たる事務所に備え置く必要があります。

この期間中、関係者から閲覧請求があった場合に対応できるように準備を進めましょう。

また、情報の保管は紙媒体だけでなく、電磁的記録(電子ファイルなど)での保存も認められています。
これらの活用により、効率的な管理が可能です。

閲覧等の請求への準備

POINT備え置いた情報は、関係者から閲覧請求やコピー提供の要求があった場合に迅速に対応する必要があります。

そのため、閲覧方法や対応窓口を事前に明確にし、スムーズに対応できる体制を整えておくことが重要です。

事後開示事項

事後開示の対象となる項目は、以下のとおりです。

事後開示事項

①登記日
合併が正式に完了した日付。
この日が基準となり、法人が法的に承認された状態で運営を開始します。

②債権者保護手続きの経過
合併前に行った公告や催告の状況、および債権者からの異議があった場合の対応内容。

▼「債権者保護手続き」については以下の記事で詳しく解説しています。

 

③承継した重要な権利義務
合併によって存続法人が引き継いだ資産や債務の詳細。
不動産や契約、借入金などが含まれます。

④事前開示事項(吸収合併契約の内容を除く)
合併前に公開された情報の中で、合併契約書に記載されていない事項。

▼「事前開示」については以下の記事で詳しく解説しています。

 

⑤その他、厚生労働省令で定められた情報
上記の他に、吸収合併における重要な事項。


引用:厚生労働省「合併・事業譲渡等マニュアル」より

 

事後開示におけるポイントと注意点

事後開示の際には、以下の点に注意しましょう。

POINT

①備置き期間の遵守
登記日から6ヶ月間、情報を保管し、請求があれば閲覧やコピー提供に対応します。


②電磁的記録の活用
情報は紙媒体だけでなく、電子データとして保存することも可能です。
閲覧請求に対応しやすい形式で整備しましょう。


③閲覧請求への迅速な対応
関係者が請求した場合、スムーズに対応できる体制を整えておく必要があります。


④所轄庁との連携
厚生労働省令や所轄庁が求める書類について、事前に確認して対応します。

▼「所轄庁の認可」については、以下の記事で詳しく解説しています。


⑤信用維持のための適切な管理
情報の不備や対応の遅れは、法人の信用に悪影響を与える可能性があります。
不備を防ぐためのチェック体制を整えましょう。

むらき

事後開示の方法においては、書面(紙)と電磁的記録(電子データ)などの備置きなど、法定で定められているやり方の他、法人のホームページなどで開示情報そのものを公開したり、事務所等に備置きしていることを周知することも検討してみてもいいかもしれません。

まとめ

今回は、「吸収合併存続社会福祉法人の事後開示」について解説しました。

事後開示は、合併後の透明性を確保し、関係者に必要な情報を提供するために欠かせない手続きです。

登記日から6ヶ月間、必要な情報を主たる事務所に備え置き、閲覧請求に対応する義務があります。

特に、承継した権利義務や債権者保護手続きの経過など、重要な事項について正確に管理することが求められます。

これらの手続きを適切に進めることで、法人の信頼を維持し、合併後の運営をスムーズに進める基盤が整います。

今回の記事を参考に、事後開示に向けた準備を進めてください。

 

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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