
▼前回の記事はこちら
当サイトでは、“今後の社会福祉法人や社会福祉事業の事業継続・建て替えなどにあたって、財産処分のことを取り上げ、このことをしっかり念頭におかなければならない”ということを言ってきました。
▼財産処分に関する記事一覧
また、以下の記事▼でも解説したように、「2040~検討会の取りまとめ」に、財産処分に関する論点が盛り込まれたということもお伝えしました。
そして今回、「2040年のサービス提供体制等のあり方」に関する検討会の取りまとめ案を受けた形で、
『人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築』
が出されました。
論点④:介護サービスを「事業」として実施する仕組み
論点⑤:介護事業者の連携強化
に焦点を当てて解説します。
介護サービスを「事業」として実施する仕組み(論点④)

市町村が「サービスを支える主体」に
人口が少ない地域では、事業者だけで介護を担うのが難しくなっています。
給付に代わる新たな事業(新類型)として、「市町村が介護保険財源を使ってサービスを提供できる仕組み」が提案されています。
(事業による仕組みのポイント)
⚪︎利用者ごとの個別払いではなく、事業の対価として事業費(委託費)により支払いを行うことにより、利用者の増減の変化に対応しつつ、収入の予見性を高め、経営の安定につなげられるようになることも考えられる。
(出典:厚労省社会保障審議会介護保険部会2025年9月8日資料『人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築』p.8)
利用者ひとりひとりに応じた個別の払いではなく、事業そのものに対して対価(委託費)を支払う方式ということですね。
これにより、
・利用者の数が変動しても、収入が安定しやすくなる
・事業者側も見通しが立てやすく、サービス提供を続けやすくなる
といったメリットが期待されています。
また資料では、事業の担い手が町内にいない場合には、近隣市町村の事業者に委託することも視野に入れられています。
こうした地域をまたいだ協力が、これからの地域福祉ではますます重要になってくるのではないでしょうか。
介護事業者の連携強化(論点⑤)

ひとつの法人だけでは限界がある
人口減少の影響が大きい過疎地域では、ひとつの法人が単独で事業を支え続けるのが難しいケースも想定されています。
そのため、複数の法人が協力して支え合う仕組みが求められています。
⚪︎中山間・人口減少地域において、地域における介護サービス提供体制を確保するとともに、地域のサービス需要に柔軟に対応する観点から、都道府県や市町村と連携しながら、法人や介護事業所が、中心的な役割を果たすよう仕組みが有効ではないか。
例えば、法人や介護事業所が、
・一定期間にわたり事業継続する役割を担うことや、
・複数介護事業所間の連携を促進するとともに、他法人・事業所の間接業務の引受けを行う等を通じた生産性向上等の取組を推進するといった仕組みが考えられるのではないか。
⚪︎実際のサービス提供は、事業者に委託することを想定。市町村内に事業所がない場合に、周囲の市町村の事業所に委託することや、複数のサービス類型を組み合わせて委託を行うことが考えられる。(出典:厚労省社会保障審議会介護保険部会2025年9月8日資料『人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築』p.10)
たとえば以下のような取り組みが、各地で実践されています。
・備品や物品の共同購入(割引き契約など)
・地域住民と連携した職員確保 など


こうした取り組みは、社会福祉連携推進法人でも行われています。実際にこうした取り組みで、職員研修を共同化したり、コスト削減を計ったりしている連携法人もあります。
▼社会福祉連携推進法人の記事は以下からお読みいただけます。
自治体・都道府県との連携も大切
法人同士の連携を進めるには、行政との協力体制づくりも重要です。
たとえば同資料によると、以下のようなサポートが考えられています。
・他法人や他事業所からの業務引き受け
・インセンティブを活用した支援策の導入 など
⚪︎こうした、法人や事業所による地域における連携等を促すためには、どのような行政の関与やインセンティブが必要か。
⚪︎こうした仕組みも活用しながら、地域におけるサービスの一定期間の継続等にかかる方針について、関係者が協議することが重要なのではないか。都道府県、市町村、法人、事業所の果たすべき役割はどのようなものか。
(出典:厚労省社会保障審議会介護保険部会2025年9月8日資料『人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築』p.10)

これらによって、「ひとつの法人だけに負担が集中する」状態を防ぎ、地域全体で支える体制を整えられる可能性がありますね。
まとめ
今回は、論点④・⑤を通して、
中山間地域などでも介護サービスを継続させるための仕組みや、事業者同士の連携のあり方について解説しました。
・市町村が主導して、“新類型”でサービスを支える仕組み
・法人同士・地域住民・行政が連携して“支え合いと協働ネットワーク”を構築
というのがポイントでした。
人口が少なくなっても高齢者が安心して暮らせる地域をつくるためには、こうした新しい発想、そして制度と連携の工夫が欠かせませんね。
本資料は今後の介護・福祉サービスの提供体制をどう構築するかということでの大きな方向性を示しているもので、まだ具体的な政策として発表されているわけではありません。しかし、自法人や自施設の今後の事業戦略を考える際の参考としてみてください。
コメント