『合併の登記手続き』~社会福祉法人の吸収合併のための手続き その8〜

このカテゴリでは、厚労省「合併・事業譲渡等マニュアル」に基づき、社会福祉法人の吸収合併における「合併の登記手続き」について詳しく解説します。

▼今回解説する「合併の登記手続き」の前段階である「債権者保護手続き」については、以下の記事をごらんください。

合併の登記手続きとは

合併が成立した後、存続法人と消滅法人はそれぞれ登記を行う必要があります。

POINT存続法人では変更登記を、消滅法人では解散登記を申請することで、法的に合併が成立したことを記録します。

合併の登記手続きでやるべきこと(実施要項)

存続法人と消滅法人でそれぞれやるべきことは、以下の通りです。

存続法人での手続き

存続法人での手続き

1.変更登記の申請
 合併による変更内容を記載した登記申請書を、管轄の法務局に提出します。

2.従たる事務所の登記
 従たる事務所がある場合、その管轄法務局にも申請を行います。

消滅法人での手続き

消滅法人での手続き

1.解散登記の申請
消滅法人は、主たる事務所の所在地を管轄する法務局に対して、解散登記を申請します。
これにより、消滅法人が正式に法人格を失ったことが法的に記録されます。

2.提出書類の準備
解散登記の際には、合併契約書の写しや所轄庁の認可証明書などが必要です。

▼合併契約書の作成については、以下の記事で解説しています。


▼所轄庁の認可については、以下の記事で解説しています。

必要書類一覧

合併の登記手続きでは、以下の書類を準備する必要があります。

以下のリストはその例ですので参考にしてください。過不足なく準備を進めましょう。

必要書類の例

①登記申請書
登記変更内容を記載した公式の申請書類。

②定款
存続法人の変更済みの定款を添付します。

③合併契約書
合併の条件や詳細を記載した契約書。


④評議員会の議事録
合併の承認を得た際の評議員会の議事録を添付します。
▼「評議員会の承認」については以下の記事で解説しています。


⑤債権者保護手続きが完了した証明書

公告や催告など、債権者に対する手続きが適切に完了したことを証明する書類。

⑥所轄庁の認可証明書
合併が認可されたことを示す、所轄庁からの正式な証明書。
▼所轄庁の認可については、以下の記事で解説しています。


⑦公告および催告をしたことを証明する書面
公告を出したことを証明するために、官報の原本やそのコピーなどを用意します。
また、債権者に送った催告書のコピーや、債権者からもらった承諾書の原本も添付する必要があります。

⑧役員の選任を証する書類
合併後の法人の理事・監事の選任を評議員会で決議した際の議事録を添付します。 

⑨理事長の就任承諾書
存続法人で新しく理事長になる人がいる場合、その人が「理事長に就任することを承諾しました」という書類を添付します。
ただし、今の理事長がそのまま引き続き理事長を務める場合は、この書類は必要ありません。


10.消滅法人の登記事項証明書 
合併後消滅する法人が、存続する法人の登記所の管轄区域外にある場合は、消滅する法人の登録事項証明書の原本を添付します(同一区域内にある場合は不要です)。 

11.財産目録
合併後に存続する法人の財産目録を添付します。 


12.委任状(代理人が申請する場合)
通常、登記申請は存続法人の理事長が行います。

ただし、理事長の代わりに事務担当者が申請をする場合や、司法書士などの専門家に依頼する場合は、そのことを証明する委任状を添付する必要があります。


引用:厚労省「合併・事業譲渡等マニュアル」より

むらき

これらの書類をしっかり用意する必要があります。特に債権者保護手続きは「公告しなければならない期間」というものもありますし、所轄庁の認可についてもその所轄庁によって、認可するまでの相当な期間を要することもあります。そのため手続きをするにあたり、「計画的に進める」部分と「余裕を持たせる」部分の両方が必要になるかと思います。

注意するポイント

合併の登記手続きにおいて注意するポイントは以下のとおりです。

存続法人、消滅法人双方の期限厳守

POINT存続法人は合併成立後2週間以内に変更登記を、消滅法人は解散登記を完了する必要があります。

登記申請は合併成立後2週間以内に申請することが必須です。

この期限を守らない場合、罰則が科されることがあります。
不備があった場合の再提出にも時間がかかるため、余裕を持って準備しましょう。

むらき

このように登記登記に関しては、期限を区切っているところがあるので、その前段階までの進捗状況管理がとても重要になってきますね。

書類の内容を正しく、最新の情報にすること

特に貸借対照表などの財務資料は、合併後の最新状況を反映させる必要があります。
登記内容に不備があると申請が受理されない場合があります。

事前に法務局の窓口や専門家と相談することをおすすめします。

所轄庁との連携

認可証明書の発行や債権者保護手続きの確認書類などは、所轄庁の協力が不可欠です。

主たる事務所が政令指定都市や中核市にある場合、通常の法務局ではなく、該当する自治体が管轄する登記所に申請する場合があります。

▼所轄庁の認可については、以下の記事で詳しく解説しています。

むらき

所轄庁の認可がなければ、当然変更登記もできません。そのためここでも書いたように、所轄庁と綿密な調整のもと合併協議を進めることが大切です。上のリンクもぜひ確認してみてください。

まとめ

今回は「合併の登記手続き」について解説しました。

合併の登記手続きでは「合併に必要な手続きが終了した日から2週間以内に、主たる事務所を管轄する法務局に申請する」という期限を厳守することが求められます。

登記手続きの正確性を確保するため、必要書類の準備や事前相談をしっかりと行い、スケジュールに余裕を持って手続きを進めましょう。

今回の記事が参考になれば幸いです。

村木 宏成

福祉の世界にたずさわり、さまざまな種別の福祉事業に取り組んできました。 生産年齢人口の急減に伴う「供給制約」、出生数減少に伴う保育需要の減少、後期高齢者数のピークアウトに伴う「需要消失」、そうした課題が、それぞれの地域ごとに並列していく時代がきています。これからの社会福祉法人は、それぞれの地域での福祉サービスを継続していくためにも、法人の合併・事業譲渡・社会福祉事業の再編統合なども視野に入れていかなければなりません。 社会福祉事業を経営するあなたの事業の悩み、問題、課題の最適解を一緒に考えていきましょう。 趣味は神社仏閣巡り 大宮の氷川神社、成田山新勝寺には長年通い続けています。

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